アルタン・トプチ(読み)あるたんとぷち(英語表記)Altan Tobchi

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルタン・トプチ」の意味・わかりやすい解説

アルタン・トプチ
あるたんとぷち
Altan Tobchi

モンゴル史書。『黄金史綱』という意味。数種ある。

(1)著者不明本または『簡略アルタン・トプチ』 17世紀前半の作品。モンゴル人の由来、チンギス・ハンからリンダン・ハンまでのハンの系譜と主要なできごとを、チベット仏教ラマ教)的観点から要述したもの。

(2)ロプサン・ダンザン撰述(せんじゅつ)本 17世紀後半の作品。(1)の著者不明本に、『モンゴル秘史』その他若干の文献の記述を引用し挿入したもの。『モンゴル秘史』からの引用量が多い。

(3)メルゲン・ゲゲン撰述本 1765年の作品。以上の『アルタン・トプチ』その他の文献に基づいて、インド史、チベット史、モンゴル帝国史、それ以後の王侯の系譜などを述べたもの。チンギス・ハンの実弟ハサルを称揚し、その子孫を詳述している。

[吉田順一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 世界史小辞典 改訂新版 「アルタン・トプチ」の解説

『アルタン・トプチ』
Altan tobchi

モンゴルの歴史書で,「黄金史」の意。この名を持つ歴史書としては,17世紀の著者不明本,ロヴサンダンジンの著作,18世紀のメルゲン・ゲゲーンの著作などが知られている。ともに仏教史観の影響を強く受け,インド,チベットの歴史に続いて,モンゴルの歴史が述べられている。著者不明本とロヴサンダンジン本には『元朝秘史』からの引用がみられる。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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