改訂新版 世界大百科事典 「アルムクビスト」の意味・わかりやすい解説
アルムクビスト
Carl Jonas Love Almqvist
生没年:1793-1866
スウェーデンの作家。ウプサラ大学に学ぶ。ストックホルムで公務員となった後,理想の農民生活を田園に求めたが挫折,作家生活に入る。奔放な空想にみちた小説《アモリーナ》(1823年に完成,書き改めて39年に出版)をはじめ,革新的なロマン主義運動の旗手として,詩,劇,評論に筆をふるい,主要作品は《野ばらの書》(1833-51)にまとめられている。グスタブ3世の宮廷の舞姫を配した華麗な小説《女王の宝石》(1834)の後,一転してルソーの〈自然に返れ〉の思潮を基盤に,素朴な農民生活を主題に《会堂》(1838)ほかの写実的な作品を書く。《それでよい》(1839)に,結婚は愛と理解に基づく個人の問題で,国家,教会が介入する余地はないという主張を色濃く盛りこんだために,周囲のひんしゅくを買い,さらに文書偽造,毒殺未遂の嫌疑をかけられて1851年アメリカへ逃れ,放浪生活15年の後,ヨーロッパへの帰途ドイツのブレーメンで客死。スウェーデン文学史上最も謎めいた存在といわれる。
執筆者:田中 三千夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報