精選版 日本国語大辞典 「アーベル」の意味・読み・例文・類語
アーベル
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ノルウェーの数学者。ルーテル派の牧師の家に生まれ,貧困と結核とによって,27年にも満たない生涯を終えたが,その短い人生の間にたいへん大きな業績を残した。クリスティアニア大学(現,オスロ大学)で学び,1823年末,五次以上の一般の方程式が代数的には解けない(係数から出発して,四則演算とべき根をとる演算で根を表すことができない)ことを証明した。25年よりドイツ,フランスに留学,ベルリンではA.L.クレレと知り合い,数学雑誌《Journal für reine und angewandte Mathematik》(クレレ誌ともいう)の創刊に協力し,また多くの論文をこの雑誌に発表した。その後オーストリア,イタリアと研究旅行を続け,26年パリに入り,ここで楕円関数に関する論文を書き,当時A.L.コーシーが審査委員をしていたアカデミー・デ・シアンスに提出したが,かえりみられなかった。27年帰国後も楕円関数に関する論文を発表,楕円積分の逆関数として楕円関数を導入し,楕円関数論を築いた。後にアーベル方程式(ガロア群がアーベル群であるような代数方程式)が代数的に解けることも証明したが,それは彼の楕円関数論の副産物と思われる。また各項が連続関数であるような無限級数は必ずしも連続関数であるとは限らないことを指摘して,一様収束の概念を導入した。
執筆者:永田 雅宜
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…群において,その演算が可換(乗法ならばab=ba,加法ならばa+b=b+aが,すべての2元a,bについて成立)であるとき,その群は可換群またはアーベル群Abelian groupであるという。N.H.アーベルが代数的に解ける方程式について研究した際に,ガロア群が可換群になるような拡大が扱われたので,この名があるという。…
… 数の加法や乗法の場合には,条件(5)交換法則,すなわちa*b=b*aが満たされている。このような場合,可換群またはアーベル群と呼ぶ。今後,この項では群の演算の記号は省略して,積はabのようにかく。…
…19世紀の中期になって,P.G.L.ディリクレが関数を数から数への対応として定義したことにより,一般の関数の概念が初めて確立された。また,コーシーの時代には極限の概念は確立していても一様収束の概念がなかったため,いくつかの誤った結果が導かれたが,N.H.アーベルによる一様収束の概念の発見によってそれらの問題点が明確になり,誤りは正された。続いてG.F.B.リーマンは,積分の定義を反省してそれを一般にした論文を発表し(1854),さらにG.カントルは無理数論ならびに集合論を創始した(1872)。…
… 代数学では,16世紀のイタリアで四次までの代数方程式が四則と開方で解かれていたが,五次以上の場合に同様の解法を得るための多くの数学者の試みは徒労に帰した。N.H.アーベルは1826年その不可能なことを証明し,E.ガロアはこの問題と方程式の根の置換群との関連を見抜いて,いわゆる〈ガロアの理論〉を創始した。そのころから抽象代数学の最初の部門としての群論が登場することになる。…
※「アーベル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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