日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウォルフ(Friedrich Wolf)
うぉるふ
Friedrich Wolf
(1888―1953)
旧東ドイツの劇作家、詩人。ブレヒトと並ぶドイツ社会主義文学の代表的作家。ドイツ民主共和国の初代駐ポーランド大使。ユダヤ人実業家を父としノイビートに生まれる。大学で医学を修め、船医、軍医も務めた。「芸術は武器」をモットーにナチスに抵抗。亡命後も精力的に文筆活動を続けた。つねに反権力の立場を貫き、革命劇『カッタロの水夫達(たち)』(1930)、ユダヤ系医師に対するナチスの暴虐をえぐり出す戯曲『マムロック教授』(1934)、農民戦争のクライマックスを描く戯曲『トーマス・ミュンツァー』(1953)など、歴史と現実社会に素材を求め、権力階級の陰謀と醜悪、被圧迫階級の抵抗と反乱をきわめて鋭い感覚で表現した。
[得津伸三]