ウシノケグサ
sheep fescue
black twitch
Festuca ovina L.
山地の乾燥地から高山帯の岩場にも生えるイネ科の多年草。茎と葉は細くて硬く,針のような感じで,多数密生して株を作る。茎は高さ20~40cm,基部から立つ。葉は強く内巻きの毛管状で,白緑色であるため銀針草(ぎんしんそう)の異名があり,欧米の庭園に植えられることもある。葉身は長さ10cmくらい,幅は0.2~0.5mmである。円錐花序は夏に現れ,長さは10cmくらいで,幅狭く,小穂はやや密に立ちぎみの枝につき,白緑色かわずかに紫色を帯びている。牛の毛草の名は,細い葉を牛の毛にたとえている。北半球全体の温帯から寒帯に広く分布し,日本では北海道と本州の中部以北に見られる。中国やシベリアでは牧草として羊の飼料にする。
ウシノケグサ属Festuca(英名fescue)は約100種あり,山野の雑草のトボシガラや,南ヨーロッパ原産の帰化植物のナギナタガヤがある。オニウシノケグサなどいわゆるフェスク類は優良な牧草であり,いくつかの種は芝生にも使われる。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ウシノケグサ
うしのけぐさ / 牛毛草
[学] Festuca ovina L.
イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。根茎は短く、走出枝がない。多数の稈(かん)が叢生(そうせい)し、高さ20~40センチメートル。新枝は完全に古い葉鞘(ようしょう)内に沿って鞘口から出る。葉は針形で二つ折りに畳まり、無毛。6~8月に稈の先に円錐(えんすい)花序をつくる。小穂は数個の小花をもち、長さ5~9ミリメートル、包穎(ほうえい)は護穎より短い。護穎は洋紙質で5脈をもち、1ミリメートルほどの芒(のぎ)がある。日本全土の山地または高山の岩場に生え、北半球に広く分布する。名は、葉が畳まって細く糸状なので、ウシやヒツジの毛にたとえていう。似たものにオオウシノケグサがある。これは走出枝をもち、株がやや広がって、新芽は一部古い葉鞘の基部を破って出る。また芒が護穎よりはるかに長くて、一年生のナギナタガヤは、ヨーロッパ原産の帰化植物である。
[許 建 昌 2019年8月20日]
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「ウシノケグサ」の意味・わかりやすい解説
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世界大百科事典(旧版)内のウシノケグサの言及
【フェスク】より
…草丈20~100cm,おもに芝用とするが,牧草に利用することもある。 シープフェスクF.ovina L.(英名sheep fescue)は和名[ウシノケグサ]。北半球の温・亜寒帯に広く分布する多年草で,変異が多い。…
【フェスク】より
…イネ科ウシノケグサ属Festucaの植物の総称。ウシノケグサ属は一年草または多年草で,温帯から亜寒帯に分布し,約100種が知られている。…
※「ウシノケグサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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