ウルグアイラウンド(読み)うるぐあいらうんど(英語表記)Uruguay round

デジタル大辞泉 「ウルグアイラウンド」の意味・読み・例文・類語

ウルグアイ‐ラウンド(Uruguay Round)

1986~1993年に行われたGATTガットの多角的貿易交渉。WTOの創設、サービス知的財産権分野におけるルールの導入などが合意された。UR。

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精選版 日本国語大辞典 「ウルグアイラウンド」の意味・読み・例文・類語

ウルグアイ‐ラウンド

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] Uruguay Round ) 一九八六年から九三年にかけて行なわれたガット(GATT)の多角的貿易交渉。世界貿易機関(WTO)の創設、サービス、知的所有権分野におけるルールの導入などが合意された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルグアイラウンド」の意味・わかりやすい解説

ウルグアイ・ラウンド
うるぐあいらうんど
Uruguay round

ガット(GATT、関税および貿易に関する一般協定)の新ラウンド(多角的貿易交渉)のこと。1948年に発足したガットは、加盟国間で自由・無差別な貿易を推進し、世界経済の安定と発展を図るという基本理念にのっとって、70年代までに7回の貿易・関税交渉を行い、関税引下げなどに大きな成果をあげてきた。しかし1980年代に入って、保護主義の高まりや、サービス貿易など商品貿易以外の国際取引の増加などの状況の変化に伴い新たな交渉の必要性が叫ばれるようになった。それに呼応して、86年9月にウルグアイで開催されたガット閣僚会議で交渉開始が宣言されたのが、ウルグアイ・ラウンドとよばれる第8回の貿易交渉である。

 第1回から第5回までのガットの貿易・関税交渉の主要な対象は関税の引下げであったが、第6回のケネディ・ラウンドと第7回の東京ラウンドでは、それに加えて農産物の問題や非関税障壁の低減も交渉対象とされ、多数の開発途上国も参加して規模が拡大した。ウルグアイ・ラウンドでは参加国は100か国を超え、交渉対象もさらに拡張されて、関税や非関税障壁の引下げや撤廃による市場開放だけでなく、サービス貿易の規制緩和やガットのルール確立・強化も交渉課題となった。

志田 明]

農業分野の交渉が難航

交渉は15の分野に分かれて開始されたが、それらは大別して三つのグループに集約される。第一は、今回新たに採り上げられた分野で、技術やデザインなど知的財産権の保護に関するルールの策定を扱う分野、直接投資の増大に伴って生じているローカル・コンテント要求などの制限措置の廃止を扱う分野、金融、通信などのサービス貿易の市場参入規制軽減を扱う分野である。第二は、保護が続いている農産物や繊維製品の市場開放について交渉する分野。第三は、緊急避難的な輸入制限(セーフガード)措置やアンチ・ダンピング措置について、その乱用を防ぐためのルール策定を扱う分野である。

 当初1990年末までに終結する予定であった交渉は、多くの分野で遅延を余儀なくされた。91年4月に交渉グループは七つに再編成され、12月に事務局長が最終合意案(ドンケル・ペーパー)を提示した。焦点である農業分野における最終合意案のポイントは、すべての農産品輸入について関税化に移行(例外なき関税化)、最低輸入量(ミニマムアクセス)の設定などである。

[志田 明]

新ラウンド決着

1993年12月、ウルグアイ・ラウンドは曲折を経ながらも、ついに合意に達した。最終包括協定案(サザランド・ペーパー)は94年4月に調印され、95年に発効した。新ラウンドの発効とともに、暫定的な機関であったガットは紛争処理機関を強化した正規の国際機関として、世界貿易機関(WTO)に衣替えした。

[志田 明]

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百科事典マイペディア 「ウルグアイラウンド」の意味・わかりやすい解説

ウルグアイ・ラウンド

世界貿易のルールづくりをめざす関税貿易一般協定GATT)の多角的貿易交渉のこと。124の国とEC代表が参加した。ウルグアイで1986年に開始宣言されこの名がつく。長らく関税引下げが議論の中心となってきた農業・繊維製品をはじめとし,これ以外のサービスや知的所有権など15の分野について論議が重ねられた。1990年の農業交渉で,米国とECが対立,1992年1月には個別品目の関税率やサービスの規制緩和を決める具体的論議に入った。1993年末実質的合意に達し,日本は米(こめ)市場の部分開放を決定した。1994年4月にはマラケシュ宣言と最終文書の採択が行われ,これらの合意の実施と紛争解決のため,1995年1月1日にGATT自体は世界貿易機関(WTO)に生まれ変わった。→ウルグアイ・ラウンド農業合意
→関連項目ASEAN自由貿易圏減反政策世界食糧サミット相互主義多国間主義農産物貿易細川護煕内閣

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改訂新版 世界大百科事典 「ウルグアイラウンド」の意味・わかりやすい解説

ウルグアイ・ラウンド
Urguay Round

GATT(ガット)が主催した第8回一般関税交渉の通称で詳しくはUrguay Round of multinationaltrade negotiations。ケネディ・ラウンド東京ラウンドに続くもので,1986年ウルグアイのプンタ・デル・エステで開始されたのでこう呼ばれる。前2回のそれと違い,貿易の中で比重を大きくしてきたサービス貿易や知的所有権,市場アクセスの問題や保護主義的傾向の強い農業などがおもな対象とされた点が特徴。特に農業保護をめぐって米欧の対立が激しく,交渉は難航したが,93年12月合意に達し,最終包括協定案が117ヵ国・地域の代表による委員会で採択され,94年4月,モロッコのマラケシュで開かれた閣僚会議でラウンドの終結が宣言され,GATTに代わり世界貿易機関(WTO)を95年1月に発足させることを確認した。最終合意のおもな内容は,(1)農業分野では関税を2000年までに平均36%削減,ミニマム・アクセス(最低輸入量)の取決め,輸出補助金の削減,(2)サービス分野では金融,運輸,通信など150種以上のすべてが対象で,最恵国待遇が原則,(3)知的所有権分野ではコンピューター・プログラムやデータベースの保護,映画著作者の貸与許諾権を規定,(4)セーフガード(緊急輸入制限)は,国内産業が輸入増により重大な損害を受ける場合などに限定,など。日本もこれにより米の輸入(部分開放)を受け入れることとなり,94年6兆円にのぼるウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策を決定した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルグアイラウンド」の意味・わかりやすい解説

ウルグアイ・ラウンド
Uruguay Round

関税と貿易に関する一般協定(ガット GATT)における貿易自由化のための 8回目の大規模交渉(ラウンド)。1986年9月にウルグアイのプンタデルエステで交渉開始が宣言されたことにちなむ。過去 7回のラウンドに比べて,(1) 史上最多の 124ヵ国が参加,(2) サービス,知的財産権(知的所有権)などの新分野を扱う,(3) 交渉期間中は各国とも保護主義的措置を控える(スタンドスティル・ローバック)などの特徴がある。新たに取り上げられた農産物貿易の問題をはじめ,各交渉分野とも利害の対立は複雑なものであったため,当初,1990年12月のブリュッセル閣僚会議での合意が予定されていたが,交渉は難航し,1993年12月にようやく妥結された。特に農業交渉では関税化を含む保護措置の削減が実現した。なお,合意事項の実施のために GATTは発展的に解消し,紛争処理機能を強化した世界貿易機関 WTOが設立された。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「ウルグアイラウンド」の解説

ウルグアイラウンド

1986年にウルグアイで交渉開始が宣言された、GATT(関税貿易一般協定)の多角的貿易交渉のこと。自由貿易の拡大を目指して新しい貿易ルールを作る交渉である。期間は4年間で交渉は15項目。GATTは2国間に貿易問題が起きたとき仲裁する立場だったが、貿易の形も次第に複雑化し、複数国の間で利害問題が浮上してきたため、多角的貿易交渉(ラウンド)へ移行していく。ウルグアイラウンドでは特許権、商標権、著作権といった知的所有権の取り扱いから、旅行、金融、情報通信など、物品をともなわないサービス貿易の国際的取引の自由化、農産物の例外なき関税化について交渉した。124カ国が参加したこの会議は難航をきわめ、94年に合意に至った。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「ウルグアイラウンド」の解説

ウルグアイラウンド

1986年に開始され,93年12月に実質合意したGATTの新多角的貿易交渉。一括関税引下げ,非関税障壁除去をめざした東京ラウンドをうけ,自由化の対象を金融・通信・情報などのサービス貿易に拡大,農業保護の削減,GATTに代わる世界貿易機関(WTO)の設立による紛争処理機能の強化などが合意された。94年終結し,翌年1月WTOがスタート。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ウルグアイラウンド」の解説

ウルグアイ−ラウンド
Uruguay Round

1986年GATT(関税および貿易に関する一般協定)によってウルグアイで開催された多角的貿易交渉
GATT非締約国の中国や旧ソ連なども参加し,サービス産業や農業貿易などに関する合意が得られた。1994年ウルグアイ−ラウンドが終結し,会議中の合意にもとづき,95年世界貿易機関(WTO)が新たな国際機関として発足した。

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