改訂新版 世界大百科事典 「エコンドライト」の意味・わかりやすい解説
エコンドライト
achondrite
隕石のうちではまれな種類に属するが,地球外物質ではもっとも地球・月の岩石に近い結晶質の隕石。もっとも普通の隕石であるコンドライトに見られるコンドルールという丸い玉を含まない石質隕石である。最初の文字aはコンドライトではないという否定の接頭辞。1974年までに知られている約2300個の非南極隕石(南極大陸以外の地域で発見された隕石)のうちに81個見つかっている。含まれる鉱物の種類,化学組成により次の9種に分類される。( )内の数字は非南極隕石中の個数。オーブライトaubrite(9),ユレイライトureilite(6),ダイオジェナイトdiogenite(8),ホワルダイトhowardite(19),ユークライトeucrite(24),シャーゴッタイトshergottite(2),ナクライトnakhlite(3),シャシナイトchassignite(2),アングライトangrite(1),その他(7)。真の結晶質の組織を保っているものは少なく,母天体上での隕石衝突により破砕,混合された角レキ岩的組織を示す。ただ1種のみの岩石よりなるものをモノミクト角レキ岩隕石,2種以上混合したものをポリミクト角レキ岩隕石という。オーブライトはほぼ純粋なマグネシウムのみよりなる輝石(エンスタタイト)からなる。ある種の鉄隕石と関連した母天体より導かれたとされている。ユレイライトは通常マグネシウムに富むカンラン石とピジョン輝石よりなり,結晶粒界にダイヤモンドを含む炭素質物質を含むことで有名。ダイオジェナイトは鉄を少し含む斜方輝石よりなり,ユークライトは鉄に富むピジョン輝石と斜長石よりなる。両者とも結晶質ないしモノミクト角レキ岩である。ホワルダイトはこの両者とその関連物質が混合したポリミクト角レキ岩である。この3種の隕石は月よりは小さなある小惑星の表層が46億年前溶融分化してできた原始的な地殻より導かれたものとされている。小惑星ベスタの表面がこの種の隕石類似の物質よりできていることが,その反射スペクトルの研究からわかっている。シャーゴッタイトはピジョン輝石とマスケリナイト化した斜長石よりなる。最近南極のビクトリア・ランドで発見されたもの二つは,カンラン石も含むユニークな隕石である。ナクライトはオージャイトを,シャシナイトはカンラン石を主とし,両者とも関連した一つの母天体より導かれたと推定されている。その形成年代が13億年前くらいと若く,強い衝撃を受けた記録を残し,また微量成分分布などが大きな天体上でできたと考えられ,火星起源説も出されている。
執筆者:武田 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報