日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
エドワーズ(Robert Geoffrey Edwards)
えどわーず
Robert Geoffrey Edwards
(1925―2013)
イギリスの医学者。リーズ近郊に生まれ、エジンバラ大学などで学び、博士号を取得。1963年にケンブリッジ大学の研究者となり、その後同大教授、名誉教授となった。2010年に「体外受精の開発」の業績によりノーベル生理学医学賞を受賞した。
1950年代の初めころにウサギの体外受精の成功を知り、人間でも同様の手法が成功すれば不妊治療に革新をもたらすとして研究を始めた。1955年から人工受精の研究を進め、さらに体外受精の研究へと発展させた。1969年に試験管のなかでヒトの細胞を受精させることに初めて成功したが、この受精卵の分裂は途中で止まってしまった。そこで、受精卵が継続して分裂し成長していくためには成熟卵子が必要と考え、腹腔鏡の研究者だったパトリック・ステプトーPatrick Christpher Steptoe(1913―1988)とともに卵巣から成熟卵を採取する方法を確立し、安定的な体外受精の道を切り開いた。1978年には、世界で初めてとなる体外受精児、いわゆる「試験管ベビー」を誕生させた。
2010年10月の時点で、体外受精で生まれた人は世界で400万人を超えており、日本では21万人以上とされている。この医療技術には倫理上の問題点が指摘されたこともあったが、ノーベル賞受賞は体外受精が一般医療として定着したことを示した。
[馬場錬成]