日本大百科全書(ニッポニカ) 「エドワード(黒太子)」の意味・わかりやすい解説
エドワード(黒太子)
えどわーど
Edward, the Black Prince
(1330―1376)
イギリス王エドワード3世の長子。百年戦争におけるもっとも有名な武将の一人。「黒太子(こくたいし)」の名は、彼が愛用した黒い鎧(よろい)に由来する。初陣のクレシーの戦いで武勲をたてたが、自ら部隊を率い勇名を馳(は)せたのはポアチエの戦い(1356)で、フランス王ジャン2世を捕虜とした。1360年の和約で割譲されたアキテーヌ公領の統治者として赴任したものの、カスティーリャとの戦いで病いを得、また財政の悪化で諸侯や都市、農民が離反し、給料未払いの傭兵(ようへい)が蜂起(ほうき)するなど、失意のうちに71年帰国した。日ごろの豪奢(ごうしゃ)な暮らしぶりと宝石についての鑑識眼(太子のルビーは現王室の王冠に飾られている)でも知られるが、父王より早く死没し、太子の次子がリチャード2世として王位を継いだ。
[松垣 裕]