知恵蔵 「エルサレム問題」の解説
エルサレム問題
エルサレムの帰属を巡る歴史は古い。紀元前1000年頃、ヘブライ(古代ユダヤ)王国が聖都と定めたのが始まり。その後、313年にキリスト教を公認したローマ帝国の統治を受け、638年以降はアラブ人イスラム勢力の支配下に入った。11~15世紀には、十字軍の東方遠征に伴い、イスラム、キリスト両勢力による争奪戦が繰り返されたが、1517年以降はオスマン帝国の版図に組み込まれた。第2次世界大戦後の1947年、国連はパレスチナ分割決議を採択し、エルサレムを国連の永久信託統治区とした。しかし第1次中東戦争(1948~49年)の結果、東西に分断され、イスラエルが西エルサレムを統治、ヨルダンが東エルサレムを統治することとなった。その後、第3次中東戦争(1967年)の結果、イスラエルはエルサレムを統合し、自国の首都と改めて宣言。更に80年には、「恒久首都」とする国内法を制定した。ユダヤ人にとって、パレスチナ地方(カナンの地)は神から与えられた「約束の地」であり、イスラエル政府は神殿があったエルサレムを特別な聖地とみなしている。一方、アラブ側のパレスチナ人はこれに強く反発し、エルサレム(東エルサレム)を将来樹立するパレスチナ国家の首都と位置付けている。
(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)
エルサレム問題
(高橋和夫 放送大学助教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報