世界大百科事典(旧版)内のエンテレヒーの言及
【生気論】より
…しかし,実験を重んじたC.ベルナールは機械論を排し,パスツールもつねに生きた細胞に独自の機能を認め,進化についてベルグソンが〈エラン・ビタルélan vital〉を主張するなど,生気論者も少なくなかった。 19世紀末,ウニの卵の発生実験をしていたドリーシュは,分離した割球が完全な幼生に発育することを発見(1891),機械論で説明しえない生命力を認めて〈エンテレヒーEntelechie〉と名付け〈新生気論neo‐vitalism〉を唱えた。このように物理的化学的説明を認めたうえでなお生物独自の原理を主張する立場を〈新生気論〉といい,この立場をとるラインケJohannes Reinke(1849‐1931)らの生物学者は〈ケプラー連盟〉を結成してE.H.ヘッケルの〈一元論者連盟〉に対抗した。…
【生命】より
…それは広い意味での生命機械論ではあるが,上位の現象(全体)を下位の現象(部分)に解消されないものとみる点で,全体論的生命観に所属させる論者もある。20世紀初年より提唱されたH.ドリーシュの新生気論は,動物が調和した全体として発生する現象に注目し,それを成り立たせる超物質的原理が存在するとし,アリストテレスの語(エンテレケイア)を借りてその原理をエンテレヒー(エンテレキー)と名づけた。これも全体論的生命観の一種とみることができる。…
【ドリーシュ】より
…このため物理・化学に立脚した発生理論に疑問をもち,99年に生気論に立つことを明らかにし,1909年の《有機体の哲学》でその思想を展開した。発生現象を一般化し,全体の大きさに無関係に各構成部分が相対的な位置にみあった分化を行う系を調和等能系と名づけ,これこそ生命独自の現象だとしてこれを起こす作用因をアリストテレスのエンテレケイアにちなんでエンテレヒーEntelechieと呼んだ。これは秩序または情報性を供給する作用因と解釈することができ,彼自身も《秩序学Ordnungslehre》(1912)と秩序の実在性を論じた《実在学Wirklichkeiteslehre》(1917)を二大著作だとしている。…
※「エンテレヒー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」