オランウータン(英語表記)orang-utan
Pongo pygmaeus

デジタル大辞泉 「オランウータン」の意味・読み・例文・類語

オランウータン(orangutan)

マレー語で、「オラン」は人、「ウータン」は森の意》霊長目ヒト科に分類される哺乳類の一スマトラオランウータンとボルネオオランウータンの2種がある。体長110~150センチ。雄のほうが大きい。体毛は長く赤褐色顔面は無毛。上肢は著しく長く、ほとんど樹上で生活し、木の枝を集めて寝床を作る。猩々しょうじょう
[類語]類人猿ゴリラチンパンジー猩猩

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精選版 日本国語大辞典 「オランウータン」の意味・読み・例文・類語

オラン‐ウータン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] orang-utan 元来はマレー語で「森の人」の意 ) ショウジョウ科の類人猿。スマトラ、ボルネオの森林にすむ。体長一・二~一・五メートル、体重四〇~八〇キログラム。後肢は短いが、前肢は長く、直立するとくるぶしまで届き、左右に広げると二・五メートルにもなる。毛は長く赤褐色で、肩、四肢、体側は特に長く、四〇センチメートルに達する。老齢の雄では頬の側方に突出する皮膚のひだができ、顔の幅が広くなる。動作は活発ではないが、脳の容積ヒトの約三分の一あり、知能は発達している。単独、または母子で樹上にすみ、めったに地上におりず、果実、木の葉や芽、卵なども食べる。猩猩(しょうじょう)。〔和蘭通舶(1805)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「オランウータン」の意味・わかりやすい解説

オランウータン
orang-utan
Pongo pygmaeus

ショウジョウ(猩々)とも呼ばれる。アフリカのゴリラ,チンパンジー,ピグミーチンパンジーに対して,オランウータンはアジアの唯一の大型類人猿である。霊長目オランウータン科。インドネシアボルネオ島スマトラ島のそれぞれに生息する2亜種が区別されているが,亜種間の違いはそれほど顕著なものではない。オランウータンというのは〈森の人〉を意味するマレー語で,彼らの生息地はこの2島の熱帯降雨林に限られている。全身赤褐色のまばらな毛で覆われており,その色合いは,性,年齢や生息地域によってずいぶん違いがある。上肢は長く,下肢の1.5倍もある。オランウータンの雄と雌の間にはきわめて顕著な性差があり,雄の頭胴長は約95cm,体重は平均75kgであるが,雌は雄の半分ほどで頭胴長は約75cm,体重は平均45kgである。体の大きさ以外にも,ほおから首にかけて硬くなった皮膚が外側にせり出したり,のどから大きな袋が垂れ下がるというおとなの雄だけに見られる顕著な形態的特徴がある。樹上では,慎重に手がかりを確保しながら移動し,テナガザルに見られるような腕だけでぶら下がって渡り歩くブラキエーションを行うことはほとんどない。地上を歩くときは,手足の指を握りしめて手の指の背面と足の外側面を地面につける。

 雌や若い個体は,もっぱら樹上で生活していてほとんど地上に降りることはないが,成長して巨大化した雄はしばしば地上を歩いて移動する。夜寝るときには,木を折り曲げて体の下に敷き込み,簡単な巣をつくる。食物は漿果(しようか)類が中心であるが,木の葉や花,樹皮も重要な食物である。シロアリもよく食べる。果実の中でもとくに野生のドリアンが大好物で,1本の木に実がなると食べつくすまで繰り返し通う。オランウータンはきわめて非社交的な動物で,たとえときおり実がたくさんなっている木に2,3頭が集まって採食することがあっても,すぐにもとの孤独な生活に戻ってしまう。雌と行動をともにするのは1頭か2頭の小さな子どもたちだけであり,雄はふつう1頭だけで遊動している。真猿類の中では唯一の単位集団をもたない種である。オランウータンの雄は,長く尾を引く大きな叫び声を上げるが,この声は1km以上の遠方にまで届き,雄どうしが距離を保つことに役だっている。それとともに,この声は発情した雌を引きつけるという機能もある。交尾は互いに向き合った姿勢で行われることが一般的で,子どもは4.5~5年に1度の間隔で生まれる。系統進化のうえからみると,オランウータンはゴリラやチンパンジーよりもひと足早く,人間に至る道筋から脇道にそれたと考えられている。しかし,知能的にはチンパンジーやゴリラに劣らないすぐれた能力をもつことが,心理学的な実験によって明らかにされている。
執筆者:

大型類人猿を含む生物分類群。かつてはショウジョウ科といった。伝統的な進化分類で用いられる。1913年にD.G.エリオットによってつくられた。オランウータン,ゴリラ,チンパンジー,ボノボとそれらに近縁な絶滅種を含む。進化分類の枠組みでは,現生ヒト上科にオランウータン科のほかにヒト科とテナガザル科を含める。ところが,分子生物学的研究により,ヒトの系統から,テナガザル類,オランウータン属,ゴリラ属,チンパンジー属の順番で逐次,分岐が起こったことがわかった。分岐分類の規則を厳密に適用すれば,ある系統群の中で最初に分岐した系統を,それ以外の残りの系統と区別して分類階級を立てる。すなわち現生ヒト上科はテナガザル科とヒト科に区分され,前者にテナガザル類が,後者にヒトと大型類人猿が含まれる。この枠組みのもとでは,オランウータン科という分類群は存在しない。生物分類学では分岐分類が主流であるが,ヒト上科の分類に関する限り,両方が用いられている。
執筆者:


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百科事典マイペディア 「オランウータン」の意味・わかりやすい解説

オランウータン

orang-utanはマレー語で森の人の意。ショウジョウとも。霊長目ショウジョウ科の類人猿。雄は身長140cm前後,ほおの円盤状の隆起が目だつ。雌は115cmほどと小さく,ほおの隆起がない。ボルネオスマトラに分布。山麓の密林にすみ,樹上に枝で巣を作り,夜はそこで眠る。ドリアン,ランブータンなどの果実を食べ,単独または家族で生活する。妊娠期間約9ヵ月,1腹1子。
→関連項目キナバル[山]サル(猿)類人猿

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世界大百科事典(旧版)内のオランウータンの言及

【キナバル[山]】より

…山頂は花コウ岩が露出した尖峰で,周辺の緑に覆われた山とは異なる山容を示す。面積686km2がキナバル国立公園となり,鳥獣禁猟区に指定され,オランウータンの生息地としても知られる。山麓の標高1700mにあるシンパン・キナバルSimpang Kinabaluは,公園管理事務所の所在地,登山根拠地であるが,近年,高原の保養地として開発が進められ,付近は野菜生産地に変貌した。…

【シバピテクス】より

…ユーラシア大陸に分布し,小型から大型まで地理的変異がみとめられる。75年以降,中国雲南省の鮮新世中期層から,ほぼ完全な下顎骨が出土し,さらに頭骨その他の化石も多数発見され,オランウータンの祖先と考える傾向が強まっている。同時にラマピテクスとは同じ種類で,両者は雄,雌の違いにすぎず,シバピテクスは雄個体だとする意見もある。…

【猩猩】より

…現在では一般に南方に生息するオランウータンを指すが,中国の古典等に現れる猩猩は想像的要素が強く,姿の形容もさまざまである。一般には猿に似ているとされ,長髪で人の顔,人の足をし,その声は小児の泣くようであり,群れを作ってはって歩くという。…

【人類】より

…ここでは類人猿社会について,それらの人間家族との相違点を検討しておくことにしたい。現生のオランウータン科はテナガザル属の8種と大型類人猿の3属4種からなる。テナガザル類はいずれも各1頭の雌雄とその子どもからなる集団をもっている。…

※「オランウータン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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