カシン‐ベック病(読み)かしんべっくびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カシン‐ベック病」の意味・わかりやすい解説

カシン‐ベック病
かしんべっくびょう

東部シベリアや中国東北部などにみられた風土病で、骨や関節が変形し、腫脹(しゅちょう)する疾患。研究・報告したカシンKaschinとベックBeckの名でよばれる。日本にも類似疾患が報告された。原因は不明で、いろいろな金属成分の過剰摂取や内分泌障害などのほか、汚染河川やビタミン説などもある。症状は手足の指の関節から始まることが多く、肘(ひじ)や膝(ひざ)の関節へと進み、O脚やX脚などを生ずる。疼痛(とうつう)を訴え、寒冷や労働によって増強する。幼小児の場合は四肢の発育が障害されて短縮をきたす。X線像では骨粗鬆(そしょう)症が顕著で、骨質の肥大と増生もみられる。関節をつくる骨のすきま(関節裂隙(れつげき))がやや広くなり、骨端も波状を呈して幅広くなり、変形性関節症がみられる。治療は変形性関節症に準じて行われるが、根治的治療法はない。しかし死亡することはない。

[永井 隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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