カチオン染料 (カチオンせんりょう)
cationic dye
1955年ころからアクリル繊維が実用化されるに伴い,これを塩基性染料で染色する試みが行われ,耐光性などを改良したアクリル繊維用の塩基性染料が出現した。これらの染料を総称してカチオン染料と呼ぶ。第四アンモニウム化合物型のカチオン(陽イオン)として繊維中の酸性基と結合して染着する。色の鮮明なことを特色とする塩基性染料が基となっているため,色はきわめて鮮明である。耐光堅牢度は5~7級と大きなものが多く(一般塩基性染料は1~2級と小さい),洗濯堅牢度も最高の5級に達する。また同一の染料でも,アクリル繊維を染着すると木綿よりはるかに堅牢になるのが普通である。したがって,カチオン染料は一般塩基性染料をはるかにしのいで,新高級染料としての地位を確保した。最近は混紡品の一浴染色に適する分散型カチオン染料も開発され注目されている。化学構造からは,アゾ系,ポリメチン系,アザメチン系,アントラキノン系などの染料である。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
カチオン染料
カチオンセンリョウ
cationic dye
オーロン系アクリル繊維の染料に用いられる塩基性染料の総称で,構造上ほとんどすべてが第四級アンモニウム基を含んでいる.近年,アクリル繊維の発展に伴い,塩基性染料がオーロン系のものをよく染め,ほかの繊維を染めた場合よりも,日光堅ろう度がかなりすぐれていることがわかり,脚光を浴びるようになった.発色母体中に第四級アンモニウム基を含む型と,発色母体と第四級アンモニウム基を絶縁基で結合した型のカチオン染料がある.化学構造的には,アゾ,複素環アゾ,アントラキノン,銅フタロシアニン,メチン,アザメチン,トリフェニルメタン系に属するものが多い.以下に例示する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
カチオン染料
かちおんせんりょう
cationic dyes
アクリル繊維用塩基性染料を、古典的な塩基性染料と区別するための呼び名。今日では、繊維用塩基性染料はアクリル繊維用のカチオン染料が主体である。
[飛田満彦]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のカチオン染料の言及
【塩基性染料】より
… アクリル繊維の出現とともに,塩基性染料の鮮明な色相と良好な染着性が再評価され,耐光堅牢度を改良したアクリル繊維を対象とした新塩基性染料の開発が行われた。これらを在来の塩基性染料と区別してカチオン染料cationic dyeと呼ぶ。カチオン染料は,ポリメチン系,アゾ系,アザメチン系,アントラキノン系が多い。…
【染料】より
…しかしながら近年の染料部属の需要は大きく変化し,ほとんど使われなくなったもの,非常に使用量が増加したものなどさまざまである。近年とくに大発展をとげたものとして,分散染料,反応染料,カチオン染料(アクリル繊維用の塩基性染料),蛍光増白剤がある。また新しい需要として感圧・感熱色素も重要性を増しつつある。…
※「カチオン染料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」