カネミ油症事件(読み)カネミユショウジケン

デジタル大辞泉 「カネミ油症事件」の意味・読み・例文・類語

かねみゆしょう‐じけん〔かねみユシヤウ‐〕【カネミ油症事件】

昭和43年(1968)10月に、西日本を中心に発生した、カネミ倉庫社(福岡県北九州市)製の食用米ぬか油による食中毒事件。脱臭工程で熱媒体として用いたPCBが製品に混入し、加熱によりダイオキシン一種であるPCDF毒性の強いコプラナーPCBに変化。接収した人に、吹出物色素沈着などの皮膚症状や、全身倦怠感・しびれ・食欲不振などの症状を引き起こした。累計認定患者数は2295人(平成28年12月末現在)。

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改訂新版 世界大百科事典 「カネミ油症事件」の意味・わかりやすい解説

カネミ油症事件 (カネミゆしょうじけん)

北九州市のカネミ倉庫(株)が1968年2月に製造した米ぬか油を食用した人たちの間に油症と呼ばれる特異な症状をもつ中毒が発生した事件。患者は同年6月初めごろから発生しはじめ,福岡県を中心に広島県,山口県,長崎県などの西日本全域におよび,同年10月にはカネミ製の米ぬか油によることが明らかとなった。この原因は米ぬか油の脱臭工程で使用される熱媒体のPCB(鐘淵化学工業製,商品名カネクロール)が,脱臭缶の損傷のため,米ぬか油に混入したことである。被害者は,カネミ倉庫,加藤三之輔社長個人,鐘淵化学工業,国および北九州市を被告として裁判を起こし,77年10月(原告44名,福岡判決),78年3月(原告729名,小倉判決),82年3月(原告342名,小倉二陣判決)と勝訴したが,国,北九州市の責任は認められなかった。また,カネミ倉庫社長,工場長は,業務上過失致傷により刑事判決(1978年3月)をうけたが,社長は無罪で確定,工場長は禁錮1年6ヵ月の実刑判決をうけて控訴,1979年1月に福岡高裁で控訴棄却の判決をうけた。鐘化と原告は87年3月の最高裁の和解案に同意し,係争中の訴訟も取り下げられ,事件後19年ぶりに決着することになった。
油症
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知恵蔵mini 「カネミ油症事件」の解説

カネミ油症事件

福岡県北九州市にあるカネミ倉庫株式会社が製造販売した「ライスオイル(米ぬか油)」によって、西日本を中心に被害者が続出した食中毒事件のこと。1968年に発覚した。製造工程でポリ塩化ビフェニール(PCB)や、これが加熱されてできるダイオキシン類が混入したことが原因とされ、皮膚や内臓の疾患、全身の倦怠感など症状は多岐にわたる。同年10月から翌年7月までに被害を届け出た人は約1万4千人で、うち9割超がカネミ油を口にしたことが確認されたが、2020年末時点での認定患者数は既に死去した人も含めて2350人にとどまる。認定患者の子や孫にも健康被害を訴える人がおり、厚生労働省は21年、子の世代に対しても健康実態調査を行う方針を示した。

(2021-2-4)

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百科事典マイペディア 「カネミ油症事件」の意味・わかりやすい解説

カネミ油症事件【カネミゆしょうじけん】

1968年,北九州市のカネミ倉庫(株)が製造した米ぬか油を食用した人たちの間に,にきび様の発疹症状を伴う中毒が発生した事件。吐き気,下痢,発熱,目やに,しびれ感などや,死産,早産もみられた。米ぬか油の脱臭工程で,PCBと,PCBの中に不純物として含まれPCBの数千倍の毒性を持つPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)が混入したのが原因。

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