1951年製作の木下恵介監督による映画。日本最初の総天然色映画(この宣伝文句で売り出された)。国産カラー(フジカラー)による長編映画の画期的な試みであったが(ロケ地もカラー効果をねらって,浅間山が背景に見えるふもとの村が選ばれた),まだカラーが全面的に信用できない段階で,同時にモノクロでも撮影されたので,2本の作品がある。カラー作品の公開は東京,大阪などの大都市だけで,地方ではモノクロ作品が公開された。ストリッパーのリリー・カルメンが芸術家気取りで故郷に錦を飾りに帰って,てんやわんやの大騒ぎになるというコメディで,例えば笠智衆ふんする小学校の校長先生の口癖,〈日本は文化国家じゃけん〉に象徴されるように,〈その当時の日本の,完全に植民地化されたところの文化,生活,要するにアメリカナイズされたところの日本人の心の中というものを風刺しようという意図を持って作られた〉(岩崎昶)。カルメンにふんした高峰秀子はこの作品から木下恵介映画のヒロインになる。
執筆者:広岡 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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