カルヴァン主義(読み)カルヴァンしゅぎ(英語表記)Calvinism

翻訳|Calvinism

旺文社世界史事典 三訂版 「カルヴァン主義」の解説

カルヴァン主義
カルヴァンしゅぎ
Calvinism

カルヴァンが始めた宗教改革思想
ルターの福音主義から出発して,アウグスティヌスの厳粛な信仰に復帰した反面,近代社会の要請に応じる市民的倫理を提供した。それは,(1)真理は教会の権威的決定ではなく,『聖書』の啓示による。(2)全知全能なる神の意志不可知。(3)救済に選ばれる者は神意により予定され,その運命は変更できないとする「予定説」を説く。だが地獄への不安や自棄に陥ってはならないのであって,人間は(4)自己のためでなく神の栄光のために,(5)神の召命すなわち職業に従って,神の嘉 (よみ) したまう禁欲勤労に専心すべきである,(6)その労働の結果得られた利得蓄財は承認される,などである。この教えは中産市民階級の信条となり,資本主義の発達に大きな影響を与えた。ユグノー・プレスビテリアン(長老派)・ピューリタン・ゴイセンなどがこれに属し,のちに多くの分派を生じた。またカルヴァン派教会においては司教を置かず,牧師とそれを補佐する長老によって教会の運営が行われる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カルヴァン主義」の解説

カルヴァン主義(カルヴァンしゅぎ)
Calvinism

カルヴァン始祖とするプロテスタント一派で改革派ともいう。教義上は神の絶対的意志,人間理性の無力を「予定説」の形で強調し,現世における神の栄光の実証を信徒に要求する。そこから信仰生活における道徳的規律と訓練(禁欲主義)を重視し,近代資本主義勃興期の勤労倫理に宗教的な動因を与えた。教会組織の面では,長老制骨子とする平信徒共同体の自律が強調され,国家権力からの教会の独立を志向する。こうした積極性と大衆性のゆえに,その勢力はスイスからフランス(ユグノー),特にオランダ,イギリス,北アメリカへと広がり,ピューリタンをはじめ多くのプロテスタント諸教派を生んだ。

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