デジタル大辞泉
「ガラクトース血症」の意味・読み・例文・類語
ガラクトース‐けっしょう〔‐ケツシヤウ〕【ガラクトース血症】
《galactosemia》ガラクトースの代謝異常により、血液や尿中のガラクトース濃度が異常に高まる遺伝病。栄養障害や知能障害を起こす。
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精選版 日本国語大辞典
「ガラクトース血症」の意味・読み・例文・類語
ガラクトース‐けっしょう‥ケッシャウ【ガラクトース血症】
- 〘 名詞 〙 ガラクトースの代謝異常により、血液や尿中のガラクトース濃度が異常に高まる遺伝病。新生児期、乳幼児期に発症し、栄養障害や知能障害を起こす。
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家庭医学館
「ガラクトース血症」の解説
がらくとーすけっしょう【ガラクトース血症 Galactosemia】
[どんな病気か]
乳汁(にゅうじゅう)(母乳や育児用粉乳)に含まれる乳糖(にゅうとう)は、ぶどう糖(グルコース)とガラクトースという2種類の糖が結合してできています。
乳糖は、乳糖分解酵素(ぶんかいこうそ)によってぶどう糖とガラクトースに分解され、小腸(しょうちょう)で吸収されます。
人間は、ガラクトースをそのまま利用できないため、肝臓でぶどう糖につくり変えて利用しています。
健康な人のガラクトースの値は、血液1dℓ中1mg程度ですが、ガラクトースの代謝(たいしゃ)に異常があると、ガラクトースとその誘導体であるガラクトース1リン酸が体内に蓄積し、さまざまな症状が現われます。
ガラクトースの代謝のどの過程に異常があるかによって、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型に分類されています。
新生児マススクリーニングでは、この病気発見のためにペイゲン法、ボイトラー法、藤村法などを組み合わせた検査を行なっています。
新生児マススクリーニングで発見される頻度は、Ⅰ型が112万人に1人、Ⅱ型が64万人に1人、Ⅲ型が15万人に1人です。
いずれも常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)です。
■ガラクトース血症Ⅰ型
ガラクトース1リン酸ウリジルトランスフェレース(略称トランスフェレース)という肝臓の酵素が欠けているために、血液中のガラクトースとガラクトース1リン酸の量が増加する病気で、尿中に多量のガラクトースが排泄(はいせつ)されてきます。
赤血球(せっけっきゅう)のトランスフェレースの活性は、肝臓のトランスフェレースの活性を反映しています。このため、新生児マススクリーニングでは、血液中のガラクトースとガラクトース1リン酸の量とともに、赤血球のトランスフェレースの活性も測定します。
●症状
母乳やミルクを飲み始めると、まもなく嘔吐(おうと)、下痢(げり)が始まり、体重の増加が悪くなります。検査をすると低血糖(ていけっとう)がみられます。
肝臓が腫(は)れ、黄疸(おうだん)が長引き、肝機能障害がみられます。
細菌が感染しやすく、敗血症(はいけつしょう)で重症になることが多いといわれています。
このまま授乳を続けると、肝障害が進行し、肝硬変(かんこうへん)になります。この結果、肝臓でつくられる出血を止める成分が欠乏し、からだのあちこちに内出血がおこるようになります。
腎臓(じんぞう)にも影響が現われ、アミノ酸尿(さんにょう)がおこるようになります。
新生児のころから目が白内障(はくないしょう)となり、脳浮腫(のうふしゅ)がおこって、筋肉の緊張が低下します。
乳児期以降まで治療が行なわれないと、知能や運動機能の発達が遅れます。
●治療
診断がついたら、ただちに乳糖やガラクトースを除いたミルクに切り替えます。
乳糖やガラクトースの制限は生涯続けることが必要で、中断すると、再び症状が現われてきます。
また、この病気の経過は必ずしも順調とはいえません。食事療法を厳格に行なっているのに、心身の発育に遅れや神経症状が出現したりすることが報告されています。外国では、女性は成人後、卵巣機能不全(らんそうきのうふぜん)がおこるとされています。したがって、代謝を専門とする医師の定期的な診察を受けることがたいせつです。
最近では、食事療法とともにウリジンという物質を併用する治療が試みられています。
■ガラクトース血症Ⅱ型(ガラクトカイネース欠損症(けっそんしょう))
血液中のガラクトースの値が上昇し、尿中に大量に排泄されていますが、ガラクトース1リン酸の血液中の値は上昇していません。
●症状
おこる障害は目の白内障だけで、Ⅰ型のような知能障害、黄疸、低血糖などはおこりません。
●治療
ガラクトース血症Ⅰ型と同様、乳糖とガラクトースを除いた食事療法が必要です。
■ガラクトース血症Ⅲ型(エピメレース欠損症(けっそんしょう))
赤血球(せっけっきゅう)に含まれるエピメレースという酵素が欠損しているために、赤血球中のガラクトース1リン酸の値が上昇します。ガラクトースの値は正常です。
新生児マススクリーニング検査が開始されてから見つかるようになった病気で、日本では、かなりの頻度で見つかります。しかし、肝機能障害や白内障などの障害はおこりません。これは、エピメレースが欠損しているのは赤血球だけで、肝臓などのほかの臓器や組織での活性には異常がみられないためといわれています。
したがって、食事療法は必要ないのですが、ガラクトース血症Ⅰ型と同じ障害をおこすケースもあるという報告もあるので、代謝を専門とする医師の一定期間の経過観察が必要です。
出典 小学館家庭医学館について 情報
ガラクトース血症
ガラクトースけっしょう
Galactosemia
(子どもの病気)
ガラクトース血症はガラクトースを代謝する経路に生まれつき障害があるため、体内に大量のガラクトースがたまる病気です。
ガラクトースは乳糖という糖の構成成分で、乳糖はミルク、母乳に多く含まれています。そのため患児では哺乳開始直後から体内に大量のガラクトースがたまります。ガラクトース血症は、障害の部位の違いによりⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型の3つに分類されています。
日本での頻度は少なく、Ⅰ型は92万人に1人、Ⅱ型は100万人に1人、Ⅲ型は5~7万人に1人とされています。
最も症状の重いのはⅠ型です。ほとんどの患児で生後2週間以内に哺乳力低下、嘔吐、下痢などの消化器症状が現れ、体重増加が不良になります。さらに進行すると白内障、肝機能異常を生じ、治療されなければ敗血症、髄膜炎などを併発して死亡することもまれではありません。
Ⅱ型は白内障が唯一の症状で、Ⅲ型は通常無症状とされています。
新生児マススクリーニングでは、ガラクトース高値を指標にしています。血液中のガラクトースは赤ちゃんの肝臓病や血管の奇形、他の代謝異常症でも高値になることがあるので、最終的な診断には酵素活性を測定して、それが低下していることを確かめます。
Ⅰ型、Ⅱ型ではガラクトース、すなわち乳糖を食事から除去することが原則です。治療には乳糖を除去した無乳糖乳や大豆乳を用います。
離乳食が始まると乳製品はもちろんのこと、乳糖を含むさまざまな食品を除去する必要があります。乳糖除去食は生涯続けなければなりません。
大浦 敏博
ガラクトース血症
ガラクトースけっしょう
Galactosemia
(遺伝的要因による疾患)
ミルクに含まれる糖質は乳糖からなり、小腸でガラクトースとグルコースへ消化されます。ガラクトース代謝に関係する3種類の酵素異常症により、血液中にガラクトースやガラクトース1リン酸が蓄積します。このほかにも、肝障害や血管の走行異常(大循環門脈シャント)、糖質の吸収障害によってもガラクトースが高値になります。
ガラクトース血症1型は、生後まもなく嘔吐、下痢、哺乳不良、黄疸などを生じ、肝不全、感染症を発症します。白内障、知能障害も引き起こします。
2型は、白内障が唯一の症状といわれています。3型は通常、無症状です。
ガラクトース除去ミルク、乳製品・乳糖除去食による食事療法を行います。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
ガラクトース血症
がらくとーすけっしょう
新生児が乳汁摂取後に血中ガラクトース値の異常な上昇をきたす疾患で、常染色体潜性遺伝の形をとる。乳汁に含まれる乳糖(ラクトース)の構成成分であるガラクトースをブドウ糖(グルコース)に変換する酵素系の障害によって血中のガラクトース値が上昇し、新生児期あるいは乳幼児期に発症する。欠損酵素の種類により、典型的なトランスフェラーゼ欠損症、ガラクトキナーゼ欠損症、エピメラーゼ欠損症の3病型に分けられる。
トランスフェラーゼ欠損症では、嘔吐(おうと)、下痢、発育不良がみられ、新生児黄疸(おうだん)が遷延する。そのまま乳汁を与え続けると、肝硬変、白内障、腎(じん)障害、知能障害などをおこし、新生児期ないしは乳児期早期に死亡するものが多い。血中や尿中にガラクトースが増量することによって診断が推量され、ただちに乳糖を含まない無乳糖乳を投与するが、赤血球内の酵素定量によって確定診断される。治療としては、母乳ならびに哺育(ほいく)用ミルクの投与を中止し、無乳糖乳や豆乳(市販名ボンラクトやラクトレスなどのラクトースフリー食品)を用いることによって大部分は症状が軽快する。離乳食の場合も乳糖を含む食品を避ける。3歳ぐらいになるとガラクトース代謝を代行する代謝経路ができるので、2歳までは厳密に行い、5歳以降は普通食でもよいとされている。ガラクトキナーゼ欠損症においても血中のガラクトース値が異常に上昇し、尿中にも多量に排出され、いわゆるガラクトース尿がみられる。やはり無乳糖乳を用いる。エピメラーゼ欠損症でも血中のガラクトース値が上昇するが、トランスフェラーゼやガラクトキナーゼが活性をもつので症状はみられず、治療の必要もないとされている。
[坂上正道]
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ガラクトース血症 (ガラクトースけっしょう)
galactosemia
酵素が欠乏して,乳糖の成分であるガラクトースを分解できないために起こる遺伝病。生後まもなくの哺乳期間中に白内障,黄疸,肝腎障害を起こす。早期に診断し,乳糖摂取を制限すると発病を防止できる。
→先天性代謝異常
執筆者:中村 了正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ガラクトース血症
ガラクトースの先天性代謝異常症で,ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼが欠損していることによる異常.食欲不振,体重減少,嘔吐,肝硬変などを発症.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のガラクトース血症の言及
【先天性代謝異常】より
…
[先天性代謝異常の分類]
生体内の物質代謝経路に従って以下のように分類する。(1)糖質代謝異常 [糖原病],[ガラクトース血症]など生体のエネルギー源であるブドウ糖の供給障害が中心である。(2)アミノ酸代謝異常 タンパク質が分解吸収され,再合成して利用される過程の障害で,[フェニルケトン尿症],[楓糖尿症],[ホモシスチン尿症]などがある。…
※「ガラクトース血症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」