改訂新版 世界大百科事典 「クモガニ」の意味・わかりやすい解説
クモガニ (蜘蛛蟹)
Oncinopus aranea
甲殻綱クモガニ科の歩脚の長いカニ。甲長2cmほどの長三角形で,甲はあまり硬くない。全体に赤黄色であるが前2対の歩脚は黄色の剛毛で縁取られる。指節が鎌形であるが,後2対の脚は前節と指節で不完全なはさみを形成する。東京湾から九州まで分布し,水深30~50mの岩場の海底にすむが,個体数は少ない。クモガニの名はむしろクモガニ類spider crabの意味で使われることが多い。この場合は,食用として重要なズワイガニや世界最大のタカアシガニ,磯に多いヨツハモガニやイソクズガニなども含まれる。日本産は約120種で,いずれも歩脚が長く,甲は一般にヨウナシ形で,額に1対の角をもっていることが多い。はさみ脚と歩脚は管状で,関節は各方向に動くため前にも斜めにも歩くことができるが,動きはにぶい。甲と歩脚にはかぎ形の毛がはえており,ごみなどがつきやすいが,ヨツハモガニのように海藻などを積極的につけてカムフラージュするものもある。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報