クラッシュ症候群(読み)クラッシュショウコウグン

デジタル大辞泉 「クラッシュ症候群」の意味・読み・例文・類語

クラッシュ‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【クラッシュ症候群】

交通事故や地震などの災害時に、建物倒壊などで四肢筋肉に長時間圧迫が加えられ、その圧迫から解放されたあとに起こる全身障害。壊死した細胞から大量の細胞内成分が漏出高カリウム血症による褐色の尿、急性腎不全心不全などの症状を起こす。輸液療法血液透析などを行う。挫滅症候群クラッシュシンドローム

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内科学 第10版 「クラッシュ症候群」の解説

クラッシュ症候群(急性腎障害・急性腎臓病(急性腎不全))

(3)クラッシュ症候群(crush syndrome), crush-related AKI
 クラッシュ症候群挫滅症候群)は筋肉挫滅による横紋筋融解が血中のミオグロビン濃度を増加させ,急性尿細管壊死(ATN)を起こし,AKIとなる病態である.横紋筋融解は外傷でも非外傷性筋障害で起こるが,特に災害時に建物などの崩壊によって横紋筋融解を起こすことが問題になる.もちろん,クラッシュ症候群はミオグロビンによるATIのほかに,低容量性ショック,敗血症,高カリウム血症,心不全,不整脈などの病態を含む症候群である.クラッシュ症候群は地震などの災害時に外傷性横紋筋融解を起こした患者の30~50%に,また,すべての外傷患者の2~5%に発症する.症状は筋肉の腫脹によるコンパートメント症候群である.激痛と筋力低下,感覚異常,麻痺が起こり,遠位部の脈を触知できないか,微弱となる.AKIが生ずるのは受傷後1~3週後であり,尿量の減少が起こる.回復期は多尿になる.循環血漿量低下,赤色・褐色尿,Scr上昇,CK上昇,高カリウム血症,尿量減少が症状として現れる.治療と予防は,循環血漿量低下を防ぐことが重要である.つまり,細胞外液輸液を積極的に行う必要がある.それも受傷直後から行う方が予後がよい.[飯野靖彦]
■文献
KDIGO Clinical Practice Guideline for AKI: Kidney Int, Suppl. 2:1-115, 2012.

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知恵蔵mini 「クラッシュ症候群」の解説

クラッシュ症候群

四肢の筋肉が長時間圧迫を受け、その圧迫から解放されたあとに起こる全身障害。「挫滅(ざめつ)症候群」とも呼ばれる。圧迫によって壊死した筋細胞内の物質が血中へ放出され、急性の腎不全、心不全などを引き起こし、死に至るケースもある。地震や事故などで家屋や車の下敷きになったり、がれきに挟まれたりして傷病を負った人に多発する。1940年のロンドン大空襲での報告例が最初とされ、日本では95年の阪神・淡路大震災で約370名以上の報告がなされたことを機に広く知られるようになった。その後、2005年のJR福知山線脱線事故でも発症例が報告されている。治療は輸液や透析による対症療法となるが、18年に慶應義塾大学などの研究チームが筋肉の壊死で起こる腎障害の仕組みを解明したことにより、予防・治療薬の開発が期待されている。

(2018-1-16)

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