クリティカルパス(読み)くりてぃかるぱす(英語表記)critical path

翻訳|critical path

デジタル大辞泉 「クリティカルパス」の意味・読み・例文・類語

クリティカル‐パス(critical path)

プロジェクトの全工程を最短時間で完了するために重要な作業経路。製造業の業務を効率化・標準化し、作業工程を分析・管理する手法として、1950年代に米国で開発された。最長経路臨界経路
[補説]製品Pを完成させるためにS1・S2・S3という三つの工程が必要であるとする。工程S1・S2・S3はプロジェクトの開始から終了までの間に並行して進めることができる独立した工程で、相互に依存しない。S1では三つの作業a・c・fをこの順番で行う必要があり、2か月を要する。S2では作業b・dをこの順番で行う必要があり、1か月を要する。S3では作業eを行い、1.5か月を要するとする。三つの工程が順調に進めば2か月で製品を完成できるが、工程S1の作業a・c・fのどれか一つでも遅れると、プロジェクト全体の製造期間に遅延が生じる。一方、工程S2には1か月、S3には0.5か月の余裕がある。S1は、製品Pを最短時間で完成させるために遅れることのできない重要な工程であり、こうした一連の作業の経路(作業a→c→f)をクリティカルパスという。これは、製品を完成させる複数の工程のうち最も期間の長い作業経路なので、最長経路ともいう。
医療現場で、病気治療検査の工程をまとめた計画表。1工程管理手法を医療に応用したもので、1980年代に米国で開発され普及した。診療計画表。クリニカルパス

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリティカルパス」の意味・わかりやすい解説

クリティカルパス
くりてぃかるぱす
critical path

研究、開発、製造、インフラ整備などのプロジェクトで、開始から終了までの所要時間を決定する一連の工程の組合せをさす経営用語。限界工程、臨界工程、最長経路などと訳される。前工程が終わらないと次の工程に進めないケースでは、プロジェクト全体の所要時間は、こうした従属関係にある一連の工程で決まる。この一連の工程のなかで、もっとも長い時間を要する工程の組合せがクリティカルパスとなる。プロジェクト推進にあたっては、クリティカルパスをいかに短くしコストを圧縮するかという観点で管理がなされる。

 クリティカルパスを用いて工程全体を管理する手法(クリティカルパス法)は、アメリカの化学会社デュポンが1958年、化学プラントの建設時間とコストを抑える目的で開発した。なお、同様のプロジェクト工程の分析手法としては、アメリカ海軍が1958年に潜水艦発射弾道ミサイルポラリス」プロジェクトのために開発したPERT(Program Evaluation and Review Technique)法がある。

 なお医療・福祉分野では、質の高い医療や介護サービスを患者に提供する目的で作成する診療計画をさす用語として使われている。この場合、クリニカルパスともいう。癌(がん)、脳卒中などの患者に対し、数年から10年程度の診療計画をつくり、患者がかかりつけ医以外の医療機関、リハビリテーション機関、介護機関、薬局・薬剤師などを利用する際に、質の高い診療・検査を受けられるようにするねらいがある。診療・介護・リハビリ機関などが継続してきめ細かな診療サービスを提供する地域連携体制の意味としても使われる。

[編集部]

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知恵蔵 「クリティカルパス」の解説

クリティカル・パス

治療や看護の手順を標準化し、診療の効率化を図る入院診療計画。クリニカル・パス(clinical path)ともいう。一定の症状であれば、入院期間は何日で、何日目にはどういう検査や治療をするかなどが最初から患者に示され、計画的に実行される。病院経営の改善に役立つほか、入院期間の短縮政策、医療費の包括(定額)払い制度にも対応できる。患者の側でも、いつ、どのような治療や検査が行われ、いつ退院できるかなどのめどをつけやすい。2002年度から診療報酬の対象になった。

(田辺功 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「クリティカルパス」の解説

クリティカルパス

「重大な経路」の意味。システム構築などのプロジェクトを進めるうえで、ネックとなる部分を指し、事実上プロジェクト全体のスケジュールを左右する作業の連なりを指す。クリティカルパスの作業が遅れると、プロジェクト全体のスケジュールが遅れることになる。このため、クリティカルパス上の作業を円滑に進行させることがプロジェクトを管理するうえで重要となっている。プロジェクトを遅らせないためには、クリティカルパスの作業が遅れた際の適切な資源の投入の最適化が求められる。

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産学連携キーワード辞典 「クリティカルパス」の解説

クリティカルパス

「クリティカルパス」とはプロジェクトにおいて、事実上プロジェクト全体のスケジュールを決定している作業の連なりのことを指す。「クリティカルパス」上の作業が遅れると、プロジェクト全体のスケジュールが遅れてしまうので、「クリティカルパス」上の作業を円滑に進行させることがプロジェクト管理上で重要となる。プロジェクトを遅らせないために、「クリティカルパス」上のタスクが遅れた際に資源を投入して遅れを取り戻せるよう、タスク配置を最適化することが求められる。

出典 (株)アヴィス産学連携キーワード辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のクリティカルパスの言及

【PERT】より

…図にはそれぞれの結合点itiEを上段にtiLを下段に表示している。 矢線図において始点から終点に至る最も長い経路をクリティカルパスと呼ぶ。図の例ではクリティカルパスは1→2→4→5に対応する。…

※「クリティカルパス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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