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ドイツ生まれのイギリスの生化学者.ゲッチンゲン大学,ベルリン大学,ハンブルク大学などに学び,1925年医学博士号を取得.その後,カイザー・ウィルヘルム協会生物学研究所のO.H. Warburg(ワールブルク)のもとで呼吸酵素を研究した.1932年フライブルク大学に移り,尿素回路を提唱.1933年ナチスが政権をとるとユダヤ系に対する迫害を避けて渡英し,ケンブリッジ大学のF.G. Hopkins(ホプキンス)の研究室に入る.その後,1938年よりシェフィールド大学薬理学講師,1945年同大学生化学教授,1954年よりオックスフォード大学教授となる.この間,D-アミノ酸酸化酵素の発見やグルタミン代謝を研究し,またピルビン酸とオキサロ酢酸が縮合してクエン酸を生じることを示し,ジカルボン酸経路を発展させてトリカルボン酸サイクル(TCA回路,クレブス回路,クエン酸回路ともいう)を提唱した.この業績に対し,1953年F.A. Lipmann(リップマン)とともにノーベル生理学・医学賞を受賞した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ドイツに生まれ,イギリスで活動した生化学者。ドイツ語読みではクレープス。ゲッティンゲン大学卒業後,O.H.ワールブルクの門に入り,呼吸酵素を研究。フライブルク大学に移って(1932),哺乳類などで尿素回路(オルニチン回路)を明らかにした(1933)。これは酵素のサイクル反応によって,アンモニアが尿素として放出される過程である。イギリスでG.ホプキンズの研究チームに加わってから,サイクル反応の着想は呼吸の反応にも生かされて,オキサロ酢酸が炭素化合物(アセチルCoA)を取り入れてクエン酸となり,二酸化炭素を放出しつつオキサロ酢酸に戻るというクエン酸回路(TCA回路,クレブス回路)の大筋をも確立した(1940)。1954年オックスフォード大学教授となる。53年ノーベル生理学・医学賞受賞した。
執筆者:長野 敬
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…トリカルボン酸回路(TCA回路),クレブス回路ともいう。イギリスの生化学者クレブスH.Krebsが1930年代の後半に発見した回路。サイトソール(細胞質基質に相当する細胞の分画成分)でグルコースあるいはグリコーゲンから嫌気性条件下で解糖反応系で生成したピルビン酸が,酸化的脱炭酸反応によってミトコンドリアマトリックスでアセチルCoAを生成すると,次にオキサロ酢酸と縮合してクエン酸が生成するステップから,このクエン酸回路が始まる。…
…トリカルボン酸回路(TCA回路),クレブス回路ともいう。イギリスの生化学者クレブスH.Krebsが1930年代の後半に発見した回路。…
…呼吸とは酸素が直接に基質を〈燃やす〉のではなく,基質から奪われた水素が酸素と出会うことであるとの理解が,こうして整ってきた。細胞内で水素を授受する機構については,セント・ジェルジなどもモデルを提出したが,H.A.クレブスのクエン酸回路(1937)が正しい回答をあたえた。第2次大戦後の研究の発展で,呼吸の反応成分はすべてミトコンドリアに局在することがわかった。…
※「クレブス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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