日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クレメンス(7世)(ローマ教皇)
くれめんす
Clemens Ⅶ
(1478―1534)
ローマ教皇(在位1523~1534)。元フィレンツェの大司教。ジュリオ・デ・メディチGiulio de' Mediciが本名。前教皇ハドリアヌス6世Hadrianus Ⅵ(在位1522~1523)が実現しえなかった教会刷新と教皇権の拡大に努めるが、宗教改革の嵐(あらし)のなかで、成果をあげることはできなかった。イギリス王ヘンリー8世の結婚問題に反対し、イギリス教会がローマから分離したのも彼の時代だった。さらにトルコの脅威を前にして、ヨーロッパの一致を説いた熱意も実を結ばなかった。歴史家ランケは、この教皇を教皇史上もっとも不運の教皇としている。
[磯見辰典 2017年11月17日]
『H・テュヒレ他著、上智大学中世思想研究所編・訳『キリスト教史 第5巻』(1981・講談社/改訂版・平凡社ライブラリー)』▽『鈴木宣明著『ローマ教皇史』(教育社歴史新書)』