改訂新版 世界大百科事典 の解説
クロイツフェルト=ヤコブ病 (クロイツフェルトヤコブびょう)
Creutzfeldt-Jakob's disease
1920年にクロイツフェルトHans G.Creutzfeldt(1885-1964),翌21年にヤコブAlfons Jakob(1884-1931)によって記載された神経疾患。中年以降に男女差なく発症,初期は性格変化や記憶・記銘力低下を示し,やがて認知症が進行し,ミオクローヌスmyoclonus(四肢や体幹に同時的,瞬間的に起こる筋肉の収縮),錐体路症状(運動麻痺など)および錐体外路症状(筋緊張の異常と不随意運動など)を呈し,末期には無言無動状態となり,数ヵ月から1年半くらいの経過で死亡する。特徴的な症状,脳波あるいはCTスキャンなどにより診断はさほど困難ではないが,まだ有効な治療法は知られていない。病理学的所見としては,大脳皮質を中心とする神経細胞の脱落,海綿状変性などがみられる。この病気は,患者の脳を乳化してチンパンジーなどの動物に接種することによって伝播可能であり,患者から角膜移植を受けた者,ヒト下垂体より調製された成長ホルモンの投与を受けた者などにも発症がみられる。本症はプリオンと呼ばれる因子により伝播し,このような疾患はプリオン病と総称されるが,最近は牛のプリオン病である牛海綿状脳症(狂牛病)からヒトへの伝播もありうると考えられており,社会的にも大きな問題となっている。
執筆者:水沢 英洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報