グラン・サン・ベルナール峠(読み)ぐらんさんべるなーるとうげ(英語表記)Col du Grand-Saint-Bernard

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

グラン・サン・ベルナール峠
ぐらんさんべるなーるとうげ
Col du Grand-Saint-Bernard

ヨーロッパ・アルプス山中、スイスとイタリアの国境に連なるワリス・アルプス西部の峠。標高2469メートル。大サン・ベルナール峠ともいう。スイスのローヌ河谷マルティニーからイタリアのアオスタに通ずる道路がアルプスを越える最高所。勾配(こうばい)は9~11%で、ザンクト・ゴタルト(サン・ゴタール)峠に比べれば通過は容易である。すでにローマ時代から南北交通の重要な峠で、1800年にはイタリア遠征のナポレオン(1世)が4万の兵を率いてここを通過した。しかし夏でも平均気温は5℃を超えず、冬には雪崩(なだれ)が多く通過が困難であった。1906年、ワリス・アルプス東方のシンプロン峠に鉄道トンネルが開通し、グラン・サン・ベルナール峠の交通は衰退した。しかし1959~64年に、道幅7.5メートル、延長5828メートルの自動車トンネルが掘削され、一年中通行が可能となり、道路交通は復活の兆しをみせている。トンネル内を南からの石油パイプラインが通じ、北麓(ほくろく)のモンテー付近の精油所に送られる。かつて峠の僧院宿泊所で飼われ、遭難者救助で有名になったのが、救助犬セントバーナード(サン・ベルナールの英語読み)である。

[前島郁雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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