翻訳|gluten
小麦などに含まれるタンパク質の一種。粘性があり、パンやうどんなどの食感を大きく左右する。小麦粉は強力粉、中力粉、薄力粉の順でグルテンの量が少なくなる。グルテンを摂取すると炎症を起こすセリアック病は、ウォールストリート・ジャーナル紙によると米国の患者数は200万~300万人だが、病気と診断されなくてもグルテンに過敏な体質の人は約1800万人いると推定される。(ニューヨーク共同)
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小さい容器に小麦粉10グラム、水6~7ミリリットルを入れて、先を丸くした木の棒でよくこねたのち、30℃ぐらいの温水中に5~10分浸してから、流水の中でもみほぐすと、白いデンプンが洗い流されて、あとにチューインガムに似たものが残る。余分の水分を搾り出すようにして除くと、べたつくようになる。これがグルテンとよばれるもので、小麦粉中のグルテニンとグリアジンというタンパク質に水を加えてこねることによってできる。グルテニンはグルテンに弾力を与え、グリアジンは柔らかくてべたつくため結合剤として働く。こうして得られたグルテンには水分が65~70%含まれている。パンが大きく、ふんわりと膨らみ、冷えてもその形を保てたり、中華麺(めん)やうどんに独特の歯ごたえある食感を与えたりするのは、小麦粉生地(きじ)中に形成されるグルテンの働きによる。他の穀粉からはグルテンが形成されないから、パンを焼いてもふっくら膨らまない。
[長尾精一]
『小竹千香子著、永井泰子絵『小麦粉のひみつ――たのしい料理と実験』(1991・さ・え・ら書房)』
小麦粉に水を加えてよく練ってから,水で洗うとデンプンが洗い流され,あとにねばねばしたものが残る。これがグルテンで小麦のタンパク質の主体である。原料の小麦粉に対し,40%前後得られる場合,その小麦粉を強力粉といい,20%前後の場合薄力粉という。中間は中力粉という。小麦粉がパンやうどんになるのは,このグルテンの粘性のためである。グルテンはグルテニンというタンパク質とグリアジンというタンパク質から成るが,タンパク質に含まれているシステインというアミノ酸が,他のシステインと化学的に結合し,網目構造をつくっている。そのためにパンのふっくらとした組織構造が得られる。したがって,薄力粉では良いパンが得られず,ビスケットなどの原料とする。また,グルテンが含まれていない米の粉からはパンは製造できない。グルテンは日本では古くから麩(ふ)として利用されている。麩は小麦粉から分離したグルテンにデンプンなどを加えて焼いたもので,グルテンの網目構造に由来して細かい気泡ができている。グルテンはまた,グルタミン酸を多く含んでいるので,化学調味料のグルタミン酸ナトリウムの原料としてもかつて用いられた。日本で初めてグルタミン酸ナトリウムが企業化されたときの原料はグルテンであった。現在はグルテンは植物タンパク,いわゆる人造肉の原料として広く用いられている。小麦粉から製造したグルテンを冷凍した冷凍生グルテンは,かまぼこなどの水産練製品に用いられる。タンパク質を変性させ,組織状にしたものは,ハンバーグなどの調理食品に用いられる。
執筆者:田島 真
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
小麦粉を水と混和してデンプンを除いた際,粘着力の強い塊となって残るタンパク質.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…デンプンは食用のほかのりとしての需要も多い。デンプンを除いた後に残るタンパク質成分である麩(ふ)質(グルテン)は,生麩および焼いて焼麩とする。粒はみそ・しょうゆなどの醸造原料としても重要である。…
…このため粉砕により皮部を分離し,粉として利用することが古くから行われてきた。また小麦特有のタンパク質であるグルテンの性質を生かすため,粉として利用することが合理的でもある。江戸時代から明治時代まで続いた在来の水車による石臼製粉は,精製技術が低くふすまの混入などのため粉の色は褐色が強く,粒度も粗かった。…
…小麦粉の中からタンパク質だけを抽出してつくる食品。小麦粉を水でこね,粘りが出たところで布袋に入れて水中でもみ洗いすると,デンプンが溶出して袋の中には小麦タンパクのグルテンが残る。このグルテンをふつう〈もち麩〉といい,これを加工して各種の生麩(なまふ)や焼麩がつくられる。…
※「グルテン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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