グローバリズム(読み)ぐろーばりずむ(英語表記)globalism

翻訳|globalism

デジタル大辞泉 「グローバリズム」の意味・読み・例文・類語

グローバリズム(globalism)

国家を超えて、地球全体を一つの共同体とみる考え方。汎地球主義。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グローバリズム」の意味・わかりやすい解説

グローバリズム
ぐろーばりずむ
globalism

グローバリゼーションが地球規模の相互依存を強化するように進行する社会的過程であるのに対し、グローバリズムはその運動と過程に価値を与えて推進する思潮イデオロギーをさす。さらに、グローバリゼーションによって達成される状態をグローバリティglobalityとよんで区別できる。

 今日、すなわち20世紀末からの第二期グローバリゼーションにおいて、これを推進する支配的なイデオロギーは市場派グローバリストによる新自由主義である。これは、自由貿易の拡大や市場のグローバルな統合を目ざすものである。1999年、牧畜農民のジョゼ・ボべJosé Bové(1953― )による、南フランスのミヨーに進出しようとしたマクドナルドへの襲撃事件や、同年シアトルで開催された世界貿易機関(WTO閣僚会議を取り囲んだ諸団体の抗議活動、死者を出した2001年のジェノバ・サミットでの抗議活動などを、「反グローバリゼーション」運動とよぶことがある。だが、これらの多くもまた、後述するように、別の形でのグローバリゼーション(オルター・グローバリゼーションとよばれる)を目ざすものであることから、グローバリズムの一種とみることができる。

 すなわち、市場派グローバリゼーションに対抗するグローバリズムとしては、次の二つがある。一つ目は、公正(正義)派グローバリズムであり、分配における正義とグローバルな連帯が目ざされている。世界経済フォーラムに結集する勢力がその代表である。別のグローバリゼーションを目ざしているため、これは反グローバリゼーションや反グローバリズムではなく、対抗的なグローバリズムである。同様に二つ目として、反世俗主義と反消費主義の特徴をもち、グローバルなイスラム共同体を目ざすなどの宗教的グローバリズムも、対抗的グローバリズムである。これらは、現行の新自由主義的なグローバリズムとは異なる、別のグローバリゼーションを志向するグローバリズムだと考えられる。

 他方で、グローバリゼーションによって加速する人の移動や外国の文化的影響を排し、国民国家という枠に回帰しようという志向性をもつ思潮が、反グローバリズムである。反EU(ヨーロッパ連合)や反自由貿易、反移民などを掲げる思潮・イデオロギーや政党などが世界各地に台頭し、急速に勢いを得ている。これらの思潮は、ポピュリズムとしての性格をあわせもつと説明されることがある。

[櫻井公人 2018年8月21日]

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百科事典マイペディア 「グローバリズム」の意味・わかりやすい解説

グローバリズム

1991年のソ連・東欧体制崩壊の後,アメリカを中心として世界を一つの市場として共有・統合する動きが一気に加速し,さらに情報通信技術の高度化やインターネットの爆発的普及も加わって,経済・情報・文化のあらゆる領域での地球的規模の流動化の動きを指す言葉として定着した。しかし,実際にはこの言葉が経済の領域で,利益追求のために各国各地域におけるさまざまな規制撤廃を必要とする資本主義先進国と多国籍企業による,市場化促進と競争原理導入のスローガンとして多く用いられた。2000年代にはグローバル経済を主導してきたアメリカの金融危機が一気に世界的に波及し,グローバリズムに理想的な対応をしてきたと見られていたEUが,信用バブル崩壊の連鎖で深刻な債務問題に見舞われ,さらに移民問題が深刻化するなどグローバリズムの負の側面が大きくクローズアップされる事態となった。グローバリズムによる世界的規模の地域格差や国内の貧富格差などの格差社会の拡大をとらえて,この言葉をマイナスの価値をもつ用語とし,反グローバリズムを掲げる市民運動や労働運動も世界各地で活発化する状況にある。グローバリズムを加速させるだけでなく,グローバリズムの暴走をコントロールするための,多国間の多様な経済連携協定や政治的枠組みづくりが,国際社会の課題となっている。→反格差社会運動
→関連項目IT革命アジア通貨危機通貨危機トランスペアランシーバイアメリカン条項派遣労働者フェアトレード

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知恵蔵 「グローバリズム」の解説

グローバリズム

文脈によって異なる意味を持つ。(1)多国籍企業の地球大の戦略。資本調達、人員の雇用、生産、マーケティングなどを、一国経済を超えて世界的規模で展開すること。(2)「宇宙船地球号」とか「かけがえのない地球」など、世界が1つの共同体であるという認識や行動。環境、人口、食糧、エネルギーなど地球的問題を人類の協力によって解決する視点に立つものが多い。

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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