日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケイ酸」の意味・わかりやすい解説
ケイ酸
けいさん
silicic acid
オルトケイ酸H4SiO4のほかメタケイ酸H2SiO3、メタ二ケイ酸H2Si2O5など、一般式SiO2・nH2Oで表される一定組成をもつ固体物質をさすが、純粋なものが得られにくく、含水量の一定しない二酸化ケイ素もケイ酸とよんでいる。岩石学では二酸化ケイ素をケイ酸とよぶことがある。四塩化ケイ素を加水分解したり、オルトケイ酸アルカリを塩酸で処理し、生成物をエーテル、ベンゼンなどで洗って乾燥すると、白色粉末のオルトケイ酸が得られるが、正確にH4SiO4の組成のものを得るのはむずかしく、メタケイ酸やメタ二ケイ酸などが混ざってくるといわれる。冷水に微溶、熱水に可溶。アルカリにはかなり溶けるが、塩酸、硫酸、硝酸には溶けない。熱するか、無水アルコール、濃硫酸により脱水される。二酸化ケイ素と塩基のモル比が異なる種々のケイ酸塩が知られているが、それらに対応する遊離のケイ酸がいつも得られるわけではない。多量の塩酸に少量の水ガラス(ケイ酸ナトリウム)を加えると、ケイ酸のコロイド溶液が得られる。また、水ガラスの水溶液に塩酸を加えると、ケイ酸が白色ゼラチン状沈殿として得られる。このケイ酸を減圧下で300℃ぐらいに加熱脱水すると、数%の水分しか含まないものが得られる。これがシリカゲルで、気体を吸着する力が強い。いったん吸着された気体も、熱すればふたたび放出される。この性質を利用して、シリカゲルは触媒や乾燥剤として広く用いられる。
[守永健一]