ケラチン弾性(読み)ケラチンダンセイ

化学辞典 第2版 「ケラチン弾性」の解説

ケラチン弾性
ケラチンダンセイ
elasticity of keratin

羊毛弾性(elasticity of wool)ともいう.ケラチン(角質)が示す延伸弛緩による伸び縮みをいう.ケラチンは毛髪,羊毛などの構造タンパクの総称で,シスチン含量が11~12% にも及び,したがって-S-S-結合による網目状構造を形成している.ケラチンは自然の状態では,縮んだコンホメーション(立体配座)のα-ケラチンであるが,延伸によってβ-ケラチンになる.延伸と弛緩によって,このα-β転移が可逆的に起こることから,羊毛などの弾性をケラチン弾性または羊毛弾性という.ケラチンの延伸において,初期は弾性率が高い.そののち,数%~30% 程度までは弾性率が低くなる.それ以上になるとふたたび伸びにくくなる.この伸びやすい弾性率の低い領域においてα-β転換が起こり,ケラチン弾性を示す.水蒸気または,100 ℃ の水中に入れると,原長より大きく収縮(超収縮)し,α構造は消滅し,β構造のみとなる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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