ケレン

デジタル大辞泉 「ケレン」の意味・読み・例文・類語

ケレン(Keren)

エリトリア北部の町。首都アスマラの北西約90キロメートル、アンセバ地方の高原地帯に位置する。鉄道、道路交通の要地であり、農産物集散地になっている。20世紀初頭のモダニズム建築ロマネスク様式の教会をはじめ、イタリア風の建造物が多数残っている。

ケレン

《〈ドイツKernstützeから》鋳造に際し、鋳型中子なかごを支える副え木を補強する金具

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ケレン」の意味・読み・例文・類語

ケレン

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Kernstütze から )
  2. 鋳型の中子を支える幅木を補強する金物。
  3. 旋盤加工において、工作物を保持し、回し板からの回転力を受ける工具。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ケレン」の意味・わかりやすい解説

ケレン

定格をはずれ,見た目本位の奇抜さをねらった演技や演出をいう。そうした芝居を〈ケレン物〉,演じる役者を〈ケレン師〉といい,邪道と考えられて非難された時期もあったが,芝居の流れの必然から行われる場合には,歌舞伎の演出の一特色ともなっている。初期の若衆歌舞伎時代に見世物芸との提携がなされて以来,元禄歌舞伎をはじめ,いつの時代にも写生的な演技の一方に,この種の演技・演出が行われてきた。《東海道四谷怪談》における〈仏壇返し〉〈提灯抜け〉〈戸板返し〉,《義経千本桜》河連法眼館の場の〈階段の打返し〉〈高欄渡り〉〈欄間抜け〉などといった演出は,幽霊や狐の演技として効果をあげている。とくに大道具に見世物的な仕掛物を見せる意図が強く,それに役者の演技としての〈綱渡り〉や〈宙乗り〉などが加わってケレン芝居が生まれる。衣装の〈ぶっ返り〉や〈引抜き〉,鬘(かつら)の〈がったり〉などという仕掛けもその演出の一端をになう。歌舞伎にとっては〈見せる〉という,大切な要素を受け持つものである。
早替り
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケレン」の意味・わかりやすい解説

けれん

歌舞伎(かぶき)演出用語。一般に観客の意表をつくことを目的とし、スピードとスリルを重んじる演技、演出をいう。俳優が文楽(ぶんらく)の人形を模して動く「人形振り」、短時間のうちに多くの役を替わってみせる「早替り」、舞台で本物の水を使う「本水(ほんみず)」などや、「宙乗り」をはじめ軽業(かるわざ)的な演技と大道具の手のこんだ仕掛け物を使う演出がこれにあたる。江戸末期、太平に飽いて刺激を求める観客の嗜好(しこう)に応じて発達した。本来は義太夫節(ぎだゆうぶし)の用語で、たとえば竹本座系の太夫が豊竹座(とよたけざ)系の流儀で語るというように、他流の節で語るのを「外連(けれん)」とよんだのが最初である。したがって、正統でない芸という意味があり、いくらか軽侮の意をこめて使われてきたが、反面、歌舞伎は本質的にそういう要素を含んだ演劇であるという見方もあって、近年3世市川猿之助はとくにこれを強調し、「けれん」とよばれる演出を多く用いて注目されている。

[松井俊諭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「ケレン」の解説

けれん

宙乗り(ちゅうのり)や早替わりなど、見た目に派手な面白さがある歌舞伎の演出方法。この他に大道具や小道具に仕掛けをする本水(ほんみず)、屋台崩し、仏壇返し、戸板返し、欄干抜けや衣装の引き抜きや、ぶっかえりなどをいう。2000年4月に東京・新橋演舞場スーパー歌舞伎「新・三国志」公演で市川猿之助が、1968年の「義経千本桜」公演から数えて海外での公演を含め5000回目の宙乗りを達成し、ギネスブックに登録された。宙乗りは元禄時代の初代市川圃十郎が初めて。後に並木正三が完成し、19世紀前半にかけて発展した。早替わりは4代目鶴屋南北が考案した。しかし明治時代の文明開化で近代リアリズムの影響を受けて写実本位の演出になり、けれんはすたれた。

(山本健一 演劇評論家 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケレン」の意味・わかりやすい解説

けれん

演出用語。曲芸的な技術が初期の歌舞伎に入り,元禄期の嫉妬事,怨霊事の業芸として展開した演出技法。幕末の怪談物などで発達した。今日では宙乗り,綱渡り,早替りなどの仕掛けのある技巧的演出を含めていうので,見世物的演出法とだけ考えられがちであるが,本来所作事の一つの動作としての劇術であり,さらに歌舞伎の舞台機構,装置,衣装,かつらなどの発達を促進させたものといってよい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ケレン」の意味・わかりやすい解説

ケレン

エリトリアの北部の町。首都アスマラの北西約70kmの,標高1370mの高原上に位置し,鉄道で結ばれている。道路交通の中心で,付近で栽培されるリュウゼツラン,タバコ,コーヒー,柑橘類,野菜などの集散地になっている。また搾油,製粉などの工業も行なわれている。1889年にイタリアに占領され,第二次大戦までその統治下にあった。人口7万4800人(2002)。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のケレンの言及

【鋳物】より

…(5)組立て 中子を主型に取り付け,上型と下型とを重ね合わせる工程。複雑な鋳物になると,何種類もの中子を使い,それを組み合わせて鋳型を作製するため,中子と中子の間,中子と主型の間で肉厚を確保しなければならないところには,〈けれん〉と呼ばれる型持ちが用いられる。(6)鋳込金属の溶解 よい溶湯にすることは鋳物製造の第一条件である。…

【怪談】より

…著名な怪談物には《東海道四谷怪談》,《彩入御伽艸(いろえいりおとぎぞうし)》(小幡小平次),《実成金菊月(みのりよしこがねのきくづき)》(皿屋敷),《東山桜荘子(ひがしやまさくらそうし)》(佐倉宗吾)などがある。怪談物の眼目の一つにはケレン(トリック)の演出があり,観客の意表をつく仕掛物や早替りの技術が発達した。また夏狂言との関連で本水(ほんみず)や宙乗りもしばしば用いられる。…

※「ケレン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android