コクタン(読み)こくたん(英語表記)ebony

翻訳|ebony

改訂新版 世界大百科事典 「コクタン」の意味・わかりやすい解説

コクタン (黒檀)
ebony

カキノキ科カキノキ属Diospyros樹木には黒色心材を有するものがあり,これをコクタンと総称する。シタンタガヤサンカリン花櫚)などとともに代表的な唐木(からき)の一つで,床柱,框(かまち),和机,飾棚,仏壇,茶だんす,細工物,美術工芸品,楽器(ピアノの鍵盤バイオリンの糸巻など),箸,そろばん枠などに賞用される。材質が緻密で,気乾比重0.80~1.43(一般には1.05~1.20)ときわめて重硬である。しかし重硬な割に加工しやすく,狂わない。色調によって通常つぎのように区別される。(1)本黒檀 全体漆黒色で光沢がある。(2)縞黒檀 黒色と灰褐色または帯紅褐色が縞をなす。ふつうやや低く評価される。(3)青黒檀 やや青緑色を帯びた黒色。光沢は少なく,最も重硬。(4)斑入黒檀 黒色と黄褐色が大理石またはメノウに似た美しい斑模様をつくる。最も高価。 カキノキ属には世界の熱帯~亜熱帯を中心として約500種があるが,直径50cm以上の大径となるものが少なく,かつ黒色心材をほとんどもたないものが多い。そのためコクタンを産する樹種は数十種以下に限られる。おもな産地インドインドシナスリランカフィリピンスラウェシ,アフリカ熱帯である。日本のカキやマメガキなどの心材にも黒色の縞模様が認められることがあり,これを〈黒柿〉といって装飾用材として珍重する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コクタン」の意味・わかりやすい解説

コクタン
こくたん / 黒檀
ebony
[学] Diospyros ebenum Koenig

カキノキ科(APG分類:カキノキ科)の常緑大高木。樹皮は黒灰色で若枝には粗毛がある。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)形、長さ6~12センチメートル、全縁で革質。雌雄同株。花は葉腋(ようえき)につき、雄花は短い花軸に3~6花つき、雌花は単生する。花冠は白色、筒状で、上半部は4裂し、萼(がく)は杯(さかずき)状で上部は4裂し、縁(へり)に毛がある。雌花は雄花より大きく、退化した雄しべと雌しべが1本あり、萼は花期後に大きくなる。果実はカキに似ているが小さく、扁球(へんきゅう)形で径約2センチメートル、種子は黒色で3~8個ある。

 インド南部、スリランカの原産。本黒檀とよばれるものの代表的な種類。辺材は灰色で黒色の筋(すじ)があり、心材は真黒色で、質が緻密(ちみつ)で堅く比重が大きい。磨けば鏡のような光沢が出るので、いわゆる唐木(とうぼく)のなかでも珍重され、床柱、高級家具、楽器、額縁、箸(はし)、彫刻、そのほか美術工芸材にする。一般には本種のみでなく、熱帯、亜熱帯の約200種のカキノキ属のうち材の美しいものを黒檀と総称することもある。D. chloroxylon Roxb.は青黒檀といわれ、インド、ミャンマー(ビルマ)、タイ原産で、辺材は黄白色、心材は黒緑色。ミャンマー原産のD. ehretioides Wall.やフィリピン原産のD. philippinensis A.DC.、そのほか縞(しま)黒檀といわれるものは、心材が黒色で赤褐色の縞がある。ベンガル湾のアンダマン諸島、マレー半島原産のD. kurzii Hiern.やスリランカ原産のD. insignis Thw.は、心材に黒色や灰色の大理石状の斑紋(はんもん)があり、斑(ふ)入り黒檀とよばれている。

[小林義雄 2021年3月22日]

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世界大百科事典(旧版)内のコクタンの言及

【木工芸】より

…木を材料として美術的に価値ある製品をつくる技術,またその技術を用いてつくられた生産品のこと。家具や調度,建具なども含まれる。
[西アジア,西欧]
 木の家具の歴史は古く,古代エジプトではファラオの玉座をはじめ寝台,椅子,腰掛,櫃(ひつ),テーブル,化粧箱,頭架などが作られている。それらの装飾には彫刻,象嵌,塗装,金箔付けなど木工芸にとって主要な装飾技法が使われていた。木材加工に使用した工具には鋸(のこぎり),鑿(のみ),ハンマー,斧,錐(きり),小刀,砥石(といし)などがあり,また部材の組手には枘接(ほぞつぎ)と蟻接(ありつぎ)などが使われていたことからみて,古代エジプトの木工技術はきわめて高い水準に達していたものとみられる。…

※「コクタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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