コミュニティ・サイクル(読み)こみゅにてぃさいくる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コミュニティ・サイクル」の意味・わかりやすい解説

コミュニティ・サイクル
こみゅにてぃさいくる

特定の区域内に複数設置されたサイクルポート(専用の駐輪場)で共用の自転車を乗り降りすることによって、多くの人が自転車を相互利用する仕組み。シェアサイクルやシェアリングサイクル、自転車シェアリングともいう。利用登録をしたうえで、専用カードやICカード乗車券などを使い、サイクルポートや自転車本体にあるコントロールパネルで乗車手続をする。移動後は、目的地付近にあるサイクルポートに返却すればよく、元の貸出し場所に戻す必要はない。同じ貸出し拠点に返却させる方式レンタサイクルとよび、区別することがある。乗車目的に従って月額会員や1日パス、1回だけの利用会員などを選んで登録する。利用料金は月額1000~2000円程度、1日パス500円程度、1回利用100円程度の設定が多く、車体に広告を付けてその収入を運営費にあて、利用料金を安く設定するケースもある。駅や公共施設、大型商業施設などに設けられた各サイクルポート間の移動手段として、気軽に利用できる。また、最寄り駅からやや離れた場所にある学校や勤務地への移動の際に利用できれば、市街地交通渋滞の緩和策や、二酸化炭素排出の抑制策としても期待できる。

 このような方法が初めて登場したのは、オランダアムステルダムで、ホワイトバイシクルプランWhite Bicycle Plan(1960)とよばれた。その後、1990年代なかばから2000年代初頭にかけて、ヨーロッパやアメリカで都市部の環境対策としてバイクシェアリングシステムbike sharing systemとよばれるコミュニティ・サイクルの導入が進んだ。リヨン(フランス)のベロブVélo'vや、コルドバスペイン)のシクロシティCyclocityなどのコミュニティ・サイクルがよく知られている。なお、ロンドンイギリス)では、市内に自転車8000台とサイクルポート570か所(2012年時点)が設けられている。

 環境省は2009年(平成21)より北海道と東京で実証実験を開始し、東京では台東(たいとう)区、世田谷(せたがや)区、江戸川区江東(こうとう)区などで本格的に運用されている。千代田区では2014年から、NTTドコモの自転車シェア事業会社ドコモ・バイクシェアと提携して、サイクルシェアサービス「ちよくる」を開始した。月額料金の決済電動自転車の解錠・施錠などを携帯電話やスマートフォンのおサイフケータイ機能を使って行うもので、同様のサービスは、東京都の江東区、港区、中央区、ほかに仙台市、さいたま市、横浜市、神戸市、広島市などでも行われている。また、名古屋市、京都市、富山市などにも独自のコミュニティ・サイクル事業がある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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