コモディティー化(読み)コモディティーカ

知恵蔵 「コモディティー化」の解説

コモディティー化

市場参入時には高付加価値を持っていた商品が、普及段階における後発品との競争なかで、その機能の優位性や特異性を失い、一般消費財のように定着していくこと。消費者サイドから見ると、「どのメーカーを選んでも大差ない、いつでも手軽に購入できる商品」がコモディティー化された商品ということになる。
本来、コモディティーとは、日用品あるいは、穀物鉱産資源など国際市場で取引される一般商品(現物品)のことをいう。特別な機能はないが、市民生活や産業活動に欠かせないため、あるカテゴリーの商品がコモディティー化されると、企業は安定した需要を見こみやすくなる。しかし、価格と物量だけが消費者の判断材料になるため、大量生産による低価格販売を余儀なくされ、高い収益は期待できなくなる。
既に多くの分野でコモディティー化が進展しているが、とりわけ近年は、インターネットの普及に伴い、IT 分野でのコモディティー化が顕著になっている。米・評論家のニコラス G.カーは、小論「IT Doesn't Matter」(2003年)の中で、「ITは既にコモディティー化しており、もはや戦略的価値を持たない」と主張し、様々な論議を呼び起こした。実際、パソコンおよびその周辺機器はもちろん、前世紀末に登場した携帯電話や薄型テレビも、低コストで製造された商品が市場にあふれ、多くの企業が低価格競争を強いられる「コモディティー・ヘル」と呼ばれる状態に陥っている。こうした状況を脱するためには、何が必要なのか。ブランド戦略やプレミアム戦略など、独自の「脱コモディティー化」を図ることが、企業の最重要課題と指摘する声が多い。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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