ロシアの作曲家リムスキー・コルサコフのオペラ。7場。台本は作曲者とベルスキー。1898年モスクワ初演。コルサコフはすでに20代の前半に故郷ノブゴロドに伝わる海洋伝説に基づいて同名の交響詩(作品5)を作曲しているが、それから約30年後に、ふたたびこの素材を用いてオペラを書くことになった。交響詩の旋律動機を借用しているとはいえ、フランツ・リストの影響を強く受けた初期の作品に比べて、ここではロシアの古い語り物音楽(ブイリーナ)の要素を積極的に取り入れて民俗色の濃い作品に仕上げている。ブイリーナ歌手サトコが海王の娘ボルフォアの助力を得て海に乗り出して数奇な運命をたどるという、メルヘンの世界を巧みに音楽で描いたこのオペラは、とりわけ第4場の「インドの歌」で有名である。
[三宅幸夫]
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