日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
サリバン(Louis Henri Sullivan)
さりばん
Louis Henri Sullivan
(1856―1924)
アメリカの建築家。ボストンに生まれ、マサチューセッツ工科大学に学ぶ。卒業後はパリのエコール・デ・ボザール(国立美術学校)への短期留学を挟んで、おもにシカゴで活動を続け、のちにシカゴ派の中心人物となった。シカゴでは、初めダンクマール・アドラーDankmar Adler(1844―1900)のもとで働いたが、まもなくその手腕を買われて、1881年にはアドラー‐サリバン共同建築事務所がつくられた。デザイン分野にその才能を発揮したが、シカゴのオーディトリアム・ビル(1889)は初期の代表作として知られる。サリバンならではの繊細にして躍動的な装飾は、このあと、セントルイスのウェインライト・ビル(1891)、シカゴ博覧会における交通館(1893)、バッファローのギャランティ・ビル(1895)と、個性的な作例を次々に生み出してゆく。彼の主張は「形態は機能に従う」ということばとともに、機能主義的な側面が強調されるが、弟子フランク・ロイド・ライトがくみ取った、詩的で有機的な空間意識を忘れてはならない。晩年は恵まれず、地方の中・小規模の仕事が多かったが、高い完成度を示した。
[宝木範義]
『竹内大・藤田延幸訳『サリヴァン自伝』(1977・鹿島出版会)』