サービス社会(読み)サービスしゃかい

改訂新版 世界大百科事典 「サービス社会」の意味・わかりやすい解説

サービス社会 (サービスしゃかい)

物財の生産がその経済活動の中心にある社会(とりわけ工業社会)に比べて,知識・情報,非物質的便益の生産が中心的な重みをもつ社会を指す。そのかぎりで脱工業社会,情報化社会などという用語と相互に代替することもできる。したがって,その社会の産業構造はクラーク分類による第3次産業が中心的な比重をもち,また職業構造の面では広義のホワイトカラー(管理的職業従事者,専門的・技術的職業従事者,事務従事者,さらに販売従事者)が大きな比率を占める。一般的には工業社会の後に到来する社会とみなされることが多いが,しかし工業社会との連続性に注目する見方もある。たしかにライフスタイルのセルフサービス化(Do It Yourself--D.I.Y.)は,特定工業部門の成長と並行して進む側面がある。銀行のキャッシュ・カード・システム,マイカーコインランドリーなどはその一例にすぎない。1970年代の後半以降,一部の先進工業国ではサービス社会への移行を危惧する考え方が勢いをえた。一言でいえば,再工業化re-industrializationの促進という思想である。サービス社会化がその国の工業部門の衰退de-industrializationを招き,この衰退が貿易収支の大幅赤字,当該工業部門を中心とした大量失業を惹起したためである。
産業社会
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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