日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェーン(映画)」の意味・わかりやすい解説
シェーン(映画)
しぇーん
Shane
アメリカ映画。監督ジョージ・スティーブンス。1953年作品。戦後フランスのヌーベル・バーグの父とよばれた映画批評家アンドレ・バザンが“sur-Western”(新たな西部劇)と特徴づけた作品。1953年は、普及し続けるテレビとの差別化を目論(もくろ)んだシネマスコープという新たな撮影技術が映画界に登場した年で、画面比がスコープサイズ(=横縦比がおおよそ2:1以上のワイドスクリーン)となった。本作はこの恩恵を十二分に受け、興行的な成功も収めた。西部劇の特徴である「荒野」の映像は奥行き感が増してより壮大に映り、そこにひとり映る孤高の主人公にはセンチメンタリズムが漂う。また、左右に広がった空間距離は、銃撃シーンに緊張感とダイナミズムを与えている。既存の型ができていた従来の西部劇映画を古典へと追いやり、このジャンルに新たな息吹を吹き込んで、人気のドル箱ジャンルへと押し上げるきっかけになった作品でもある。1953年、アカデミー撮影賞受賞。1953年(昭和28)日本公開。
[堤龍一郎]