シドニー民族暴動(読み)しどにーみんぞくぼうどう

知恵蔵 「シドニー民族暴動」の解説

シドニー民族暴動

シドニー郊外の南部クロヌラ・ビーチで2005年12月、白人5000人がレバノン人を中心とした中東系のイスラム教徒武力衝突し、民族暴動にまで発展した。クロヌラ・ビーチはもともと白人居住者が多く、夏の週末には海岸付近は海水浴客などでごった返す地区。ところが近年、レバノン人を筆頭に中東系の移民が大挙して定住するようになり、中東系移民が経営するレストランや雑貨店の数が急速に増加した。このため、以前から住んでいる白人居住者と、中東系の新居住者との間に摩擦が生じるようになり、小競り合いが日常的となった。今回の民族暴動は、同ビーチの海難監視員への暴行事件が発端。これに抗議する多数の白人が無差別に中東系移民を襲撃し、中東系移民が報復のために商店や車を破壊したことで、キリスト教徒とイスラム教徒の対立、白人と非白人の対立へと発展した。レバノン系移民はオーストラリア国内では大きな存在感をもつ。イスラム教徒は総人口の1.5%に相当する約30万人で、そのうち約40%がレバノン系だ。シドニーとメルボルンでは05年11月、イスラム過激派の容疑者17人が逮捕されており、イスラム教徒への猜疑心が高まりつつある。このような社会的緊張背景に、民族暴動が再燃することが危惧されている。

(竹田いさみ 獨協大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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