出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
シメオン
Simeon
古代イスラエル民族の伝統的な12部族の祖先,族長ヤコブの第2子(《創世記》29)。シメオンの名で呼ばれた部族はパレスティナでの定着に十分成功せず,ユダ部族に吸収されたが,後代の伝承世界では有力な役割を与えられた。ヨセフ物語ではユダとともに12人の兄弟の中では指導的な存在として描かれ,ユダヤ教時代にはユダとベニヤミンとならんで祖先の部族として有力となり,イエスの系図にも位置を占めた(《ルカによる福音書》3)。
執筆者:並木 浩一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
シメオン
Simeon, Charles
[生]1759.9.24. リーディング
[没]1836.11.13. ケンブリッジ
イギリス国教会聖職者。福音伝道の指導者で,ケンブリッジの宗教生活に消しがたい影響を与えた。ケンブリッジのキングズカレッジで教育を受け,副学寮長 (1790~92) をつとめた。 H.ベンと J.ベンの影響のもとに 1782年ケンブリッジのトリニティ教会に入り,以後死ぬまで牧師。イギリス国教会の有力なメンバーの一人であり,伝道,特にインドの伝道に力を注ぎ,ヘンリー・マーティンら,輩下の最優秀者を派遣。イギリス聖公会宣教協会 Church Missionary Societyの設立を援助 (99) 。そのほか,イギリス聖書教会 British and Foreign Bible Societyに参与,私財を投じて宣教活動を推進,福音伝道を続けるためシメオン財団 Simeon Trostを創立 (1816) した。
シメオン
Simeon
旧約聖書中の人物。ヤコブとレアの第2子。イスラエル 12支族のうち同名の支族の祖先 (創世記 35・23,出エジプト記1・2など) 。父ヤコブの命に従い穀物を求めてエジプトにおもむいた 10人の一人で,当時エジプト全国の司であった弟ヨセフの交換条件を受入れ,弟ベニヤミンがカナンからエジプトに連れてこられるまで人質となった (創世記 42・24) 。その支族はカナンの南方に向い,イスラエル 12部族の最南端に定住したらしいが (ヨシュア記 19・1~9) ,あまり目立たない小部族で,ついにはユダ族のなかに吸収されたと思われる。
シメオン
Simeon(Symeōn)
聖霊の示しにより救い主を待望していたエルサレムの敬虔家。神殿で両親に伴われたイエスに出会い,その幼子を救い主と認め神への賛歌『ヌンク・ディミッティス』 Nunc dimittisを歌ってイエスとマリアにその将来を預言した (ルカ福音書2・25~35) 。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のシメオンの言及
【シモン】より
…新約聖書中の人名。旧約聖書のシメオンに相当し,シモンはそのギリシア音写による。複数の同名人物が知られているが,おもなものは,(1)イスカリオテのユダの父,(2)イエスの兄弟,(3)十二使徒の一人で,熱心党のシモンと呼ばれる人,(4)クレネ人(びと)で,ゴルゴタに向かうイエスの十字架を無理に負わされた人,(5)魔術師シモン([シモン・マグス])などである。…
【神殿奉献】より
…この場面は〈マリアの潔めの式〉とも呼ばれ,イエバトのひな2羽が犠牲にささげられる。また,このとき神殿には聖霊の示しを受けているシメオンSimeonという名の老人がいたが,この幼子が主のつかわす救世主(メシア)であることを即座に理解し,イエスを腕に抱く。老預言者アンナもまた近寄ってきて幼子をたたえる。…
※「シメオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」