ジークフリート(英語表記)Siegfried

翻訳|Siegfried

デジタル大辞泉 「ジークフリート」の意味・読み・例文・類語

ジークフリート(Siegfried)

ドイツ北欧の伝説上の英雄。中世ドイツの叙事詩ニーベルンゲンの歌」の主人公怪力で悪竜を退治し、その血を浴びて、背中の一か所を残し不死身となる。ニーベルンゲン宝物を得、王妹クリームヒルトと結婚するが、王の重臣ハーゲンに殺害される。
ジロドゥー戯曲。4幕。1928年初演。第一次大戦で記憶を失い、ドイツ軍に救われて英雄ジークフリートの名を与えられたフランス人を通して、民族・祖国戦争などの問題を描く。
ワグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」四部作の3作目にあたる作品。試練と成長を描く。

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精選版 日本国語大辞典 「ジークフリート」の意味・読み・例文・類語

ジークフリート

  1. ( [ドイツ語] Siegfried )
  2. [ 一 ] ドイツ中世の叙事詩「ニーベルンゲンの歌」の中に登場する王子。ニーベルンゲン族の宝物を手に入れ、大龍を殺して英雄的な働きをする。グンター王を助けその結婚を助けるが、最後は謀殺される。
  3. [ 二 ] 戯曲。ジロドゥ作。一九二八年発表。第一次世界大戦で記憶を失いドイツ軍に救われて、英雄ジークフリートの名を与えられたフランスの兵士を通し、民族、祖国、戦争などの問題を描出。

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改訂新版 世界大百科事典 「ジークフリート」の意味・わかりやすい解説

ジークフリート
Siegfried

エッダサガなどの古北欧伝説と《ニーベルンゲンの歌》に登場する人物。

 《ボルスンガ・サガ》ではジークフリート(古北欧語ではシグルズSigurðr,Sigurd)は鍛冶屋に養われていて,あるとき竜を退治して宝物を手に入れる。旅の途上彼は,甲冑に身を包んだブリュンヒルトBrynhild(ブルンヒルデBrunhilde)を救い出し,彼女に結婚を約束する。ところが,ライン河畔のギューキ王の宮廷で忘れ薬を飲まされ,王女グズルーンGuðrún(クードルーン)と結婚する。裏切られた思いにかられたブリュンヒルトはジークフリート殺害を企て,ここから悲劇が始まる。

 《ニーベルンゲンの歌》では,ジークフリートはあるときニーベルンゲン族を倒して莫大な宝の所有者となり,宝番のアルプリヒからは〈隠れ蓑〉を奪ったこと,さらに彼がかつて竜を退治した際にその返り血を浴びて全身が角質となり,不死身となったことなどが語られる。実は彼の背中には一枚の木の葉のために血を浴びなかった所があり,そこが弱点となって後にブルグント王グンテルGuntherの重臣ハーゲンHagenに刺し殺されることになる。隠れ蓑はグンテルのブリュンヒルト求婚の際に役に立ち,ニーベルンゲン族の宝は争いのもととなる。ジークフリートの超人的特質はザクセン遠征にもよく示されている。

 北方伝説ではジークフリートの祖先北欧神話の主神オーディンとなっており,彼を神話的存在と見ることもできるが,《ニーベルンゲンの歌》ではジークフリートはゲルマン英雄主義的な力の象徴であり,同時にその英雄主義は悲劇の根源であった。
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百科事典マイペディア 「ジークフリート」の意味・わかりやすい解説

ジークフリート

ゲルマン伝説中の英雄。北欧ではシグルズSigurdと呼ばれる。《ニーベルンゲンの歌》の主人公で,ライン下流のニーダーラントの王子。〈隠れ蓑〉のエピソード,退治した竜の返り血を浴びて不死身となるが,1ヵ所だけ弱点が残り致命傷を負うこと,ブリュンヒルトとの確執など,人口に膾炙(かいしゃ)した伝承に富む。R.ワーグナーの楽劇《ニーベルングの指環》の取材源のひとつ。

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デジタル大辞泉プラス 「ジークフリート」の解説

ジークフリート〔架空の戦艦〕

ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのOVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場する宇宙戦艦。ムサイ級軽巡洋艦のひとつ。全長234メートル。ムサイ級の最終生産タイプ。

ジークフリート〔舞台〕

ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーのドイツ語による全3幕の楽劇(1876)。原題《Siegfried》。中世ドイツの叙事詩に基づく楽劇『ニーベルングの指輪』中の第3作。

ジークフリート〔映画〕

1924年製作のドイツ映画。ニーベルンゲン伝説の映画化。監督:フリッツ・ラング。

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とっさの日本語便利帳 「ジークフリート」の解説

ジークフリート

ドイツ伝説『ニーベルンゲンの歌』の英雄。ニーベルング族の財宝を手に入れ、大竜を殺し、グンター王を女傑ブリュンヒルトと結婚させ、自らは王の妹クリームヒルトと結婚するが、ハーゲンに謀殺される。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典(旧版)内のジークフリートの言及

【ニーベルングの指環】より

…1854)では,ラインの黄金に呪いがかかる次第が物語られ,第1夜《ワルキューレDie Walküre》(3幕。1856)ではいくさ乙女ワルキューレの一人であるブリュンヒルトが,彼女の父大神ウォータンの命に背いたので,岩の上に眠らされている次第を,第2夜《ジークフリートSiegfried》(3幕。1871)では若き英雄ジークフリートが,大蛇を退治し,ブリュンヒルトを目ざめさせる次第を,第3夜《神々のたそがれGötterdämmerung》(3幕。…

【シカ(鹿)】より

…鹿はそのしなやかで美しい姿態,優美な動きと機敏さ,美しい目などからして,古くから神の使いとされ,またさっそうとした若武者にたとえられた。〈エッダ〉では英雄シグルズ(ドイツではジークフリート)が〈獣の間にすらりとした鹿が立ったよう〉と表現されている。 鹿はまた民間の信仰や習俗,歌や民芸でも重要な役割を果たしている。…

【不老不死】より

…神々の食物アンブロシアや神酒ネクタルも不死にする力をもつことで知られる。ゲルマン神話では,ジークフリートは退治した竜の血を浴びることで不死者となる(ただし,アキレウス同様,彼にも唯一の弱点があり,ために落命する)。錬金術の分野では,エリクシル(エリキサー)が不老不死の霊薬と考えられるようになった中世後期以降,これを手に入れて400年生きたと伝えられるサン・ジェルマン伯らの怪人物が現れている。…

※「ジークフリート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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