ソマトスタチン(英語表記)somatostatin

デジタル大辞泉 「ソマトスタチン」の意味・読み・例文・類語

ソマトスタチン(somatostatin)

成長ホルモンの分泌抑制作用などを有するホルモン視床下部脳下垂体膵臓ランゲルハンス島δデルタ細胞などで産生される。

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改訂新版 世界大百科事典 「ソマトスタチン」の意味・わかりやすい解説

ソマトスタチン
somatostatin

14個のアミノ酸からなるホルモンで,1973年ブラゾーP.Brazeauらによって,50万個のヒツジの視床下部の抽出物から分離,同定された。成長ホルモン(別名ソマトトロピン)の分泌を抑制することから,成長ホルモン放出抑制因子growth hormone inhibiting factor(GIFと略記),growth hormone inhibiting hormoneGIH),somatotropin release inhibiting factor(SRIF)とも呼ばれる。ソマトスタチンは,成長ホルモンだけでなく,脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を抑制し,さらにインシュリングルカゴンガストリンなど,膵臓や消化管からのホルモンの分泌を抑える作用ももつ。一方,ソマトスタチンは視床下部ばかりでなく,脳内全域,末梢神経,甲状腺,膵臓,胃や腸などにも広く存在していることが証明されており,栄養物の消化や吸収,血糖値の調節などにも関与していると考えられている。ソマトスタチンの生理的な役割はまだ十分に解明されていないが,各種のホルモン分泌を制御する生体調節系として,重要な役割をもつと考えられる。
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栄養・生化学辞典 「ソマトスタチン」の解説

ソマトスタチン


 成長ホルモン分泌抑制因子.下垂体,消化管,膵臓のランゲルハンス島などで合成分泌され,成長ホルモンの分泌抑制,インスリン,グルカゴンの分泌抑制などの活性がある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のソマトスタチンの言及

【視床下部】より

…H-Thr-Ala-Asp-Ala-Ile-Phe-Thr-Asn-Ser-Tyr-Arg-Lys-Val-Leu-Gly-Gln-Leu-Ser-Ala-Arg-Lys-Leu-Leu-Gln-Asp-Ile-Met-Ser-Arg-Gln-Gln-Gly-Glu-Ser-Asn-Gln-Glu-Arg-Gly-Ala-Arg-Ala-Arg-Leu-NH2GRFは成長ホルモン分泌促進作用をもつ。(3)ソマトスタチンsomatostatin 成長ホルモン分泌抑制因子GIF(growth hormone release inhibiting factorの略)あるいはSRIF(somatolropin release inhibiting factorの略)ともいう。1973年,ギルミンらは,ヒツジの視床下部組織から成長ホルモンの分泌を抑制する分画を発見し,純化を行って14個のアミノ酸からなるソマトスタチンの構造を決定した。…

【成長ホルモン】より

…脊椎動物の脳下垂体前葉の好酸性細胞から分泌されるホルモンの一つ。分泌は視床下部の支配を受け,抑制因子ソマトスタチンsomatostatin(GIF,GIHまたはSRIFと略記)と促進因子(GRFまたはGRHと略記)によって調節される。このホルモンは硬骨魚類から哺乳類に至るまで1本鎖の単純タンパク質で,S-S結合をもつ。…

【内分泌腺】より

…ただし,円口類ではA細胞の存在ははっきりしない。哺乳類ではソマトスタチンsomatostatinを分泌するD細胞も見いだされている。(6)胃腸 胃の幽門部,十二指腸,小腸始部にホルモンを分泌する細胞が散在している。…

【視床下部】より

…脳下垂体後葉ホルモンであるバソプレシンとオキシトシンも視床下部で産生されるので,広義には視床下部ホルモンに含まれる。 すでに1950年代から,視床下部に脳下垂体前葉ホルモンの分泌を調節する物質が存在することが証明されていたが,70年にTRH,71年にLH‐RH,73年にソマトスタチン,81年にはCRF,82年にGRFの構造がそれぞれ決定された。現在明らかになっている視床下部ホルモンは,CRF,GRF,ソマトスタチン,TRH,LH‐RH,PIFである。…

【成長ホルモン】より

…脊椎動物の脳下垂体前葉の好酸性細胞から分泌されるホルモンの一つ。分泌は視床下部の支配を受け,抑制因子ソマトスタチンsomatostatin(GIF,GIHまたはSRIFと略記)と促進因子(GRFまたはGRHと略記)によって調節される。このホルモンは硬骨魚類から哺乳類に至るまで1本鎖の単純タンパク質で,S-S結合をもつ。…

【内分泌腺】より

…ただし,円口類ではA細胞の存在ははっきりしない。哺乳類ではソマトスタチンsomatostatinを分泌するD細胞も見いだされている。(6)胃腸 胃の幽門部,十二指腸,小腸始部にホルモンを分泌する細胞が散在している。…

【脳下垂体】より

…また,なかには構造が解明されていないものもあり,そのような場合にはホルモン放出因子releasing factor(RF)と呼ばれている。このような放出ホルモンまたは放出因子とは逆に,放出を抑制するホルモン,すなわちホルモン放出抑制ホルモンinhibiting hormone(IH)もあり,プロラクチン放出抑制ホルモン(PIH),成長ホルモン放出抑制ホルモン(ソマトスタチン)などがみつかっている。
[後葉と後葉ホルモン]
 神経下垂体の後葉からは,オキシトシンoxytocin(OT)とバソプレシンvasopressin(VP)の二つのホルモンが出されるが,これらのホルモンは後葉で生合成され,分泌されるものではない。…

※「ソマトスタチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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