音楽と楽譜の中間領域に位置する理論の一種。文化や時代によって、音楽演奏に密着する場合から、より楽譜的機能をもつ場合まで、実態はさまざまである。
狭義のソルミゼーションは、ヨーロッパ中世期にグイード・ダレッツォ(992/995ころ―1050ころ)が、ut (do), re, mi, fa, sol, laを左手指の関節をなぞりながら体系づけることを試みたことに端を発するといわれている。その背景には、アラビアからの影響があったとする説もある。以後、西ヨーロッパ諸国で微妙に異なる体系が成立し、ソルフェージュの一環として音楽教育のなかに組み込まれた。日本に導入されると、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シによる階名唱法とハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロによる音名唱法とに整理されかけたが、調によってドの位置が変わる移動ド唱法と、移動させない固定ド唱法の2種の階名唱法が現在並存している。
広義のソルミゼーションに含められるものとして、日本では雅楽・能楽・民俗芸能の楽器の教習と記憶法に供せられる(口(くち))唱歌(しょうが)や、口三味線(くちじゃみせん)、インドでは階名唱法サ・リ・ガ・マ・パ・ダ・ニの、太鼓の唱歌ボルなどがある。一般にソルミゼーションに組み込まれる音韻体系は、母音と子音を多数区別して、音楽演奏での音高(音階音)や音色の使い分けが明確に意識されるようにくふうされている。
[山口 修]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…第1に,言葉がもつ〈響き〉としての分節的特徴は母音と子音の違いに端的に現れているし,第2に音が連なったときに形成される韻律的特徴は音節(シラブル)の数や長短関係の操作によってリズムや形式といった音楽構造に大きくかかわる。主として分節的特徴を生かした歌詞は,具体的意味内容を表現するよりもむしろ音の効果が意図され,たとえば楽器音を模倣した口三味線などの口唱歌(くちしようが),ソルミゼーションsolmization(西洋のドレミファ,インドのサ・リ・ガ・マ・パ・ダ・ニなど音階の各音にそれぞれ1音節をあてはめ,声による読譜を行う方法),母音唱法,ハミング,スキャット,掛声,はやしことばのように音楽の成立を支えている。韻律的特徴を前面に出す場合には,七五調(和歌,謡曲,浄瑠璃など)や八六調(琉歌)のように規則的に音節群を組み合わせたり,西洋の詩のように強弱や長短の韻律パターンを重視したり,頭韻,脚韻,母韻といった押韻技法を使って対句や連句さらに節(スタンザ)が形成され,それに応じた形で音楽構造が決定されることが多い。…
…広義には読譜と表現に関する音楽の基礎教育全般を指す。 高さの違う種々の音を区別して単純なシラブルで呼ぶことをソルミゼーションsolmizationといい,音階の各音を表せば音名や階名の機能をもつ。旋律の記憶や教習の手段として,古来,種々のくふうがなされている。…
※「ソルミゼーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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