チタン化合物(読み)チタンカゴウブツ

化学辞典 第2版 「チタン化合物」の解説

チタン化合物
チタンカゴウブツ
titanium compound

チタンは酸化数-1,0,2~4で化合物をつくる.4がもっとも安定な酸化数で,大部分のチタン化合物はこの酸化数のものである.酸化物([別用語参照]酸化チタン),およびチタン酸塩,ハロゲン化物([別用語参照]塩化チタンヨウ化チタン(Ⅳ)),硫化物,ホウ化物,炭化物,ケイ化物,窒化物,リン化物,塩類および錯化合物などが知られている.Ti化合物は比較的安定であって,Ti2O3,Ti2S3,TiX3(X = ハロゲン)などがある.Tiの化合物は不安定で,TiO,TiX2(X = ハロゲン)などに限られている.Ti,Ti化合物ともに水溶液中および空気中で Tiに酸化されやすい.酸化数-1,0の化合物には [Ti-Ⅰ(bpy)3],[Ti0 (bpy)3](bpy:ビピリジン)がある.通常の原子価に合わない侵入型化合物も存在する.チタン酸バリウムBaTiO3は,高周波域において高誘電率・低損失な誘電体として,携帯通信機器用高周波デバイスとして利用されている.TiO2はすぐれた純白性と高い屈折率をもつので白色顔料塗料に,さらに光酸化触媒として抗菌用,防汚用建材,親水性からガラスの防曇加工などに用いられている.純度の高いものはチタニアとして装飾用にも使われる.わが国のチタン需要の9割がTiO2としてで,その2/3が塗料,顔料に向けられている.TiCl4無色の液体でKroll法による製錬の中間物として重要であるほか,有機合成用の触媒,煙幕用にも使われる.TiCl3は立体特異性触媒としてポリプロピレン製造用に重要である.Nb0.6Ti0.4超伝導材料(転移温度9.8 K)として,大型加速器用,核融合実験装置用,医療用超伝導マグネットに多用されている.海水に対する耐食性が高いため,火力・原子力発電所の海水冷却・超大型熱交換器“復水器”は全チタン管に置き換えられた.チタン合金は軽量で高い強度,すぐれた耐熱性をもつ構造材である.Ti-6Al-4V(数字は質量%)合金は1950年代前半から航空機に使用されはじめ,1960年代のアメリカの超音速・高高度偵察機SR71の機体はほとんどβ合金Ti-13V-11Cr-3Al製で,Tiを大量に使用した最初の航空機であった.価格を問題としない軍用には,このほか,旧ソ連のアルファ級潜水艦船殻がある.わが国の“しんかい”,“かいこう”など深海潜水調査船用材料にもTi-6Al-4V合金などが使用されている.最近のボーイング777型航空機も機体重量の10% はTiとされる.ゴルフクラブヘッド,歯科用インプラント,眼鏡フレーム,人工骨にもチタン合金が使われている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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