チーム医療(読み)チームイリョウ

デジタル大辞泉 「チーム医療」の意味・読み・例文・類語

チーム‐いりょう〔‐イレウ〕【チーム医療】

異なる診療科の医師どうしのほか看護師作業療法士栄養士医療ソーシャルワーカーなどが一緒になって行う医療

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チーム医療」の意味・わかりやすい解説

チーム医療
ちーむいりょう
team care

さまざまな職種の医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しながらも互いに連携補完しあい、協働して患者の状況に的確に対応した医療を提供すること。チーム医療は、(1)専門職種の積極的な活用、多職種協働を図ること等により医療の質を高めるとともに、効率的な医療サービスを対象者・家族に提供すること、(2)疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、(3)医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減、(4)医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上等を目的としている。さまざまな専門職種が協働・連携することを「多職種連携」ともよぶ。

 従来、患者に対して主としてかかわるのは医師と看護師であったが、近年の医療の高度化、医療技術の進歩に伴い、より高度な検査や治療が可能となったことで、現在はより多くの医療スタッフが参画している。さらに、かつては病院や施設が中心だった医療の場が地域へと拡大されてきたことにより、一人の患者が受ける医療も広がり、複雑化してきている。そのため、より多くの医療スタッフのかかわりが必要になっている現状がある。たとえば医療施設においては、医師、歯科医師薬剤師、看護師、管理栄養士などが協働して、患者の食生活や栄養状態の改善に向けて取り組む「栄養サポートチーム」がある。在宅医療においては、対象者の状況にあわせて、医師、訪問看護師ケアマネージャー理学療法士、作業療法士、介護福祉士、管理栄養士などがチームになり医療が提供される。

 国もチーム医療を推進しており、2010年(平成22)には厚生労働省の「『チーム医療の推進に関する検討会』報告書」において、チーム医療のあり方がまとめられた。報告書では看護師がチーム医療のキーパーソンとして位置づけられているほか、チーム医療を推進するためには、(1)医療スタッフの専門性の向上、(2)各医療スタッフの役割の拡大、(3)医療スタッフ間の連携・補完の推進等が基本となるとされている。2021年(令和3)現在の医療において、質の高い安全な医療へのニーズにこたえるためには、チーム医療が欠くことのできないものとなっている。

[横山美樹 2021年7月16日]

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知恵蔵 「チーム医療」の解説

チーム医療

一人ひとりの患者に対し、関係する専門職が集まり、チームとしてケアに当たること。従来は、患者への医療ケアの内容を主治医が決定し、看護師、薬剤師、栄養士などの各専門職に指示するシステムが一般的だったが、近年は、患者の状態に応じて複数の科、複数の職種にまたがるチームで医療サービスを提供していくのが一般的となっている。患者本人やその家族もチームの一員としてとらえるケースもあり、時と場合によって「チーム」の範囲は異なる。
このような医療提供体制が普及してきた背景には、医療の高度化がある。診断技術や治療の多様化・複雑化に伴って専門分化が進み、主治医1人だけでは様々な情報を総合して判断することが困難になってきている。質の高い安全な医療へのニーズに応えるには、情報と意見を多職種で交換しながら意思決定を行っていく過程が不可欠である。
理念上、チーム内ではどの職種も対等の立場だが、法的に、医療行為は医師の指示のもとで行うことと規定されているため、各専門職の主体的な判断が患者のベッドサイドで十分にいかされているとは言いがたい。厚生労働省は2010年3月に「チーム医療の推進について」と題する報告書を上げ、これに基づいて現在、看護職等の業務範囲や教育を見直す作業が急ピッチで進められている。
チームの具体例として、胃がんの患者が病巣の摘出手術で入院するという場合、医師では摘出に当たる外科以外に、進行度やがんのタイプに応じて、化学療法が必要であれば内科、放射線療法が必要であれば放射線科、精神状態が不安定なら精神科、痛みが強ければ緩和ケア科などが治療に関与する可能性がある。これに各科の看護師と、胃切除後の食事指導で管理栄養士、心理カウンセラー、経済状態や家族の状況が療養生活を支えきれないと思われる場合は医療ソーシャルワーカーが加わるなどして、カンファレンス(会議)を開き、カルテや看護記録を共有しながら治療やケアの方針を決定していく。術後に在宅療養へと移行する場合は、患者の自宅に出向いて訪問診療を行う医師を始め、訪問看護師、ケアマネジャー、薬剤師、栄養士、ヘルパー、理学療法士、訪問歯科医師などでチームを組織し、病院との連携を図りながら治療とケアを進めることになる。疾病の種類や障害によっては、他に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などがチームに加わることもある。

(石川れい子  ライター / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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