ティル・オイレンシュピーゲル
てぃるおいれんしゅぴーげる
Till Eulenspiegel
低地ドイツ語ではUlemspegel。英雄豪傑物語と、庶民の間で語り伝えられた滑稽(こっけい)茶番をもとにして、16世紀初頭ドイツで出版された民衆本の主人公。ヨーロッパ各国語に訳されて世界文学の人物となった。その特徴は、ことばの多義性を逆手にとって人の鼻を明かすところにある。たとえば比喩(ひゆ)的な命令を文字どおりに実行したりする。14世紀に実在したともいわれるこの人物は、軽蔑(けいべつ)された農民出身の放浪児としてドイツ中を渡り歩き、ことばの才をもってあらゆる社会階層にいたずらをしかけ、人々の笑いを誘うとともに、やがて教育的意味を加えるようになった。近代になって劇・オペラの素材として広く用いられたが、なかでも有名なのが「ロンドー形式による音の無頼の物語」の副題をもつリヒャルト・シュトラウスの交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』(作品28。1894~95作曲、1895ケルン初演)である。
[尾崎賢治]
『藤代幸一訳『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』(1977・法政大学出版局)』
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ティル・オイレンシュピーゲル
Till Eulenspiegel
ドイツの民衆本。 1500年頃ブラウンシュワイクにおいて低地ドイツ語で書かれた枠物語の形式をとった笑話集。 15年にシュトラスブルクで出された高地ドイツ語版が現存最古のもの。百姓の子に生れたオイレンシュピーゲルが,放浪者となり各地を遍歴,いたずらの限りを尽して司祭や手工業者の親方,学者などをへこまし,いかなる場合にも生得の知恵を発揮して勝利を収めるという物語。作者にはブラウンシュワイクの徴税書記ヘルマン・ボーテの名があげられている。この民衆本は全ヨーロッパで人気を博し各国語に翻訳,翻案された。また後世のウェデキントや G.ハウプトマンもこの素材をもとに作品を書き,音楽では R.シュトラウスの『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』 (1894) が有名。
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ティル・オイレンシュピーゲル
1510年―1511年に出版されたドイツの民衆本の主人公。ティルという農民の子が,職人奉公しながら各地を巡り歩き,愉快ないたずらと頓智(とんち)で都市住民の鼻をあかす滑稽(こっけい)話の収集で,各国語に翻訳された。のちにド・コステルCharles de Coster(1827年―1879年)が小説に登場させR.シュトラウスによる交響詩(1895年)もある。
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