地球以外の惑星や他天体の衛星などの環境を人類が生活できるように改変すること。地球化、惑星改造ともよぶ。1961年に天文学者のカール・セーガンが発表した金星の環境改造計画に関する論文から、本格的な研究が始まった。
人類型の生命が継続的に生活するためには、対象天体が適度な大気で覆われ、適度な温度が維持され、水が液体で存在することが必要とされる。したがってテラフォーミングされる天体はハビタブルゾーン内の地球型天体が対象になる。この意味で、セーガンが地球にもっとも近く、ほぼ同じ大きさの惑星である金星をテラフォーミングの対象に選んだのは当然であったが、その後の精密な観測により金星が灼熱(しゃくねつ)地獄(表面温度が平均470℃、液体の水は存在しない)であることが判明して、関心は火星に移った。
最近の調査で、火星は過去には海が広がるほど水が豊富にあったことがわかってきた。しかし火星は質量が地球の10分の1程度しかなく、表面重力も地球の40%程度しかないことから、過去に存在した大気は宇宙へ逃げ出したと考えられている。そのため、火星の大気の表面気圧は、地球の大気圧の1%弱になっており、大気の保温効果がほとんど効かず、地表温度は平均でマイナス43℃しかない。そこで、火星のテラフォーミングの最大の課題は、大気の再構成とその大気の保温効果による気温の上昇である。このように、テラフォーミングにおいては、対象の天体表面の大気圧・大気組成(酸素や窒素の有無)、温度の適正化、水の液体状態での回復などが課題になる。火星においては、大気を再構成するために、極地にある氷の状態の水やドライアイスである二酸化炭素を、火星軌道上に置く反射鏡やレンズで太陽光を収束して、温めて蒸発させることが提案されている。ある程度大気が増えて温暖化効果が出てくれば、地表温度も上昇することが期待される。しかし、これらの自然的方法では、テラフォーミングが完成するまでには100年から1000年程度の時間が必要とされることが問題になる。それを補うために、彗星(すいせい)や水が主成分の小惑星を火星に衝突させて、大気や海を生成する少し過激な方法も提案されている。また、時間短縮の手段として、火星地表の表土を加熱融解して大気を生成することも提案されている。火星の場合、重力が小さいこと(地球の40%)は変えられないが、自転周期(つまり火星の1日)がほぼ地球の1日と同じであり(約24時間40分)、また自転軸が公転面に対して約25度(地球では約24度)傾いているので、地球と同じような季節がある。ゆえに、火星のテラフォーミングが完成すれば、かなり快適な人類生存圏として期待できる。
一方、金星の場合、豊富すぎる大気による温室効果を低下させるために、金星軌道上に大きな日傘を設置して、温度低下を目ざす提案がされているが、達成時間が長期間になる(数千年から数万年)ため、よりよい方法が模索されている。また、金星の自転軸がほぼ反転(自転軸が公転面に対して約177度傾いている)していることや、自転周期が逆行していることなどを解消するために、小惑星を衝突させることが考えられている。これらの手法では、同時に厚い大気を吹き飛ばすことも考慮されている。
完全なテラフォーミングには時間がかかりすぎることから、対象天体の一部を大気を含む温室(ワールドハウスとよぶ)で覆うなどする「パラテラフォーミング」という手法も検討されている。
[山本将史 2022年4月19日]
『矢沢サイエンスオフィス・竹内薫著『人類が火星に移住する日――夢が現実に! 有人宇宙飛行とテラフォーミング』(2015・技術評論社)』
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