日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
デュポン(Éleuthère Irénée du Pont de Nemours)
でゅぽん
Éleuthère Irénée du Pont de Nemours
(1771―1834)
アメリカの実業家。アメリカ最大の化学会社デュポンの創立者。パリの生まれ。父Pierre Samuel du Pont de Nemours(1739―1817)は経済学者、外交官、行政官、雑誌の編集発行人と多才の人。彼は若いころから火薬工場、印刷工場などの仕事を経験し、フランス革命の際に反革命のパンフレットの印刷などをした。
ジャコバン党によって工場が没収され、1799年アメリカに亡命し、1802年、経験を生かしてデラウェア州ウィルミントンに火薬工場を建設した。南北戦争、西部開拓など、19世紀を通じて増大する需要に支えられて、火薬事業は順調に伸びた。彼は63歳で死去したが、会社は20世紀初めには火薬工業界を支配するまでに成長し、工場数は100を超す経営規模となった。
1912年に、反トラスト法によって企業分割を余儀なくされたが、2回の世界大戦を通してふたたび巨大企業へと成長した。火薬以外にも数多くの化学製品を生産し、自動車、原子力にも手を広げた。
[川又淳司]