日本大百科全書(ニッポニカ) 「トム・ジョーンズ」の意味・わかりやすい解説
トム・ジョーンズ
とむじょーんず
The History of Tom Jones, a Foundling
イギリスの作家フィールディングの長編小説。1749年刊。全18巻208章に及ぶ。イギリスの片田舎(いなか)の名望家の家に捨て子として発見され、その家で育てられるトムが主人公。闊達(かったつ)な少年に育ったトムは近所の地主の一人娘ソファイアと恋仲になるが、悪友の影響で名望家から勘当され、ロンドンへの放浪の旅に上る。ソファイアも家出してその後を追う。2人は会いそうになっては会わず、結局別々にロンドンに着くが、最後はめでたく結ばれる。道徳的にはけっして模範青年でないが、さっそうと小気味よいトムの性格が、当時の世相の描写と相まって、快い小説をつくっている。小説としての第一作『ジョーゼフ・アンドルーズ』でうたった「散文による喜劇的叙事詩」という彼の小説の理想が、この作で実現された感が深い。各巻の第1章がそれぞれほとんど独立したエッセイの形になっているのも大きな特徴になっている。
[朱牟田夏雄]
『朱牟田夏雄訳『トム・ジョウンズ』全4冊(岩波文庫)』