日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリオ・ソナタ」の意味・わかりやすい解説
トリオ・ソナタ
とりおそなた
trio sonata イタリア語
17世紀後半から18世紀前半にかけて流行した、二つの旋律楽器と通奏低音による室内楽。この場合のトリオとは、古典派以後の三重奏曲のように楽器の数を示すのではなく、三つの声部が基本となっている書法を意味する。トリオ・ソナタはイタリアで生まれ、コレッリの各12曲からなるトリオ・ソナタ曲集(四巻、1681~94)の出版以来、全ヨーロッパに広まった。形式は、初期のカンツォーナ風のものから、教会ソナタ(緩―急―緩―急の四楽章構成)や室内ソナタ(舞曲の連続)、さらにはこの二つの形式を混合したものへと変わっていく。コレッリ以後の主要作曲家には、イギリスではパーセルとヘンデル、フランスでは大クープラン、ドイツではテレマンやJ・S・バッハなどがいる。とくにバッハの作品では、伝統的な三声部書法(二つの手鍵盤(けんばん)とペダルがそれぞれ独立したパートをもつ)にイタリアの協奏曲の三楽章構成(急―緩―急)を取り入れたオルガン用トリオ・ソナタなどにおいて、斬新(ざんしん)な試みがなされている。
[関根敏子]