ナップ(地学)(読み)なっぷ(英語表記)nappe

翻訳|nappe

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナップ(地学)」の意味・わかりやすい解説

ナップ(地学)
なっぷ
nappe

水平に近い面に沿って、大規模に側方へ移動した異地性岩塊。ナッペ、デッケDecke(ドイツ語)ともいう。衝上(しょうじょう)断層に沿って移動した衝上ナップをさす場合と、大規模な横臥褶曲(おうがしゅうきょく)によって移動した褶曲ナップをさす場合とがある。通例2~3キロメートル以上側方へ移動した異地性岩塊をナップとよび、移動量が数百メートル程度以下のものはナップとはよばない。アルプス(ヨーロッパ)、アパラチア(アメリカ)など世界の大規模な造山帯に普通にみられる。これは、多くの造山帯が側方圧縮の場に置かれ、著しい短縮がおこったことによるが、これ以外にも、著しい隆起によって重力的に不安定になり、重力滑動をおこして側方へ移動したナップもある。

 衝上ナップの代表的な例は、アパラチア造山帯のバレーアンドリッジ帯や、北米コルディエラ山系の褶曲‐衝上断層帯にみられる。これらの地帯では低角な衝上断層によって、同一層準の地層が繰り返して分布しており、ナップが積み重なった覆瓦(ふくが)状構造がみられる。褶曲ナップの例はアルプスのヘルベチア帯でみられる。また横臥褶曲の逆転翼に沿って生じた衝上断層により移動した場合があり、これは褶曲ナップと衝上ナップの両方特徴をもつ。

[村田明広]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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